宮川春水

宮川 春水（みやがわ しゅんすい）

宮川春水は、生没年は不詳ですが、江戸時代の浮世絵師として知られています。彼は宮川長春の晩年の弟子であり、画号には「藤四郎」や「満洗堂」、さらには「勝宮川」や「勝川」といった変遷があります。江戸の深川に居住し、後に芳町に移った彼は、寛保から明和にかけて活躍しました。早い時期には宮川長亀の影響が見られましたが、次第に彼自身の独特の可憐で繊細な画風を確立していきました。

春水は、主に版本の挿絵や肉筆の美人画を手がけました。特に、宝暦10年に出版された『絵本武者軍鑑』の挿絵が有名で、彼の作品はこの時期から明和にかけて7、8点が確認されています。肉筆画に関しては、より多くの作品が残されており、約20点が知られています。また、浮絵や見立絵も手がけた彼は、幅広い作品を制作していました。

寛延3年（1750年）には、宮川一門と稲荷橋狩野家との間に刃傷沙汰が発生しました。この事件を受けて、春水は宮川の名を避け、「勝宮川」や「勝川」と名乗るようになり、その後も絵師としての活動を続けました。彼の門弟には、勝川春章が含まれており、春水の影響が彼の作品にも反映されています。

代表的な作品

宮川春水による多くの作品が現存しています。その一部を以下に紹介します：

• - 朝顔を採る美人図（ボストン美術館所蔵）
• - 浮絵座敷義太夫狂言図（ボストン美術館所蔵）
• - 美人髪洗い図（フリア美術館所蔵）
• - 太夫と禿図（絹本着色、城西大学水田美術館所蔵）
• - 三味線を弾く美人図（紙本着色、東京国立博物館所蔵）
• - 名古屋山三郎物語絵巻（紙本着色、東京国立博物館所蔵、伝 宮川春水）
• - 花魁と禿図（紙本着色、東京国立博物館所蔵）
• - 桜下遊女と禿図（紙本着色、浮世絵太田記念美術館所蔵）
• - 花持つ美人図（紙本着色、浮世絵太田記念美術館所蔵）
• - 楓下詠歌の図（紙本着色、浮世絵太田記念美術館所蔵）
• - 柿採る美人図（紙本着色、浮世絵太田記念美術館所蔵）
• - 初音図（紙本着色、MOA美術館所蔵）
• - 花下三曲合奏図（紙本着色、奈良県立美術館所蔵、「勝川」の落款あり）

これらの作品は、春水が描いた美人画や日常の情景を通じて、当時の江戸文化や美意識を伝えています。彼の絵は、今なお多くの人々に愛され、高く評価されています。春水の画風や作品については、楢崎宗重編『肉筆浮世絵Ⅰ（寛文～宝暦）』や吉田漱著『浮世絵の見方事典』など多数の文献で研究が進められています。彼の作品や影響は、江戸時代の浮世絵界において重要な位置を占めています。

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