富山県立図書館

富山県立図書館：地域を支える知識と文化の拠点

1940年（昭和15年）、紀元二千六百年記念事業の一環として設立された富山県立図書館は、富山県民の文化向上と教育発展に貢献する重要な機関です。本稿では、その歴史、役割、サービス、そして貴重なコレクションについて詳しく解説します。

明治時代からの設立運動と開館

県立図書館の設立は、明治時代から県民の熱意によって推進されました。富山県実業協会や富山教育会などの団体が県に設立を要望しましたが、実現には至りませんでした。その後、富山市立図書館が開設されましたが、中央図書館としての役割を十分に果たすには財政的に困難がありました。そこで、紀元二千六百年記念事業の一環として県立図書館の設立が決定。1940年4月1日、富山市総曲輪に開館しました。当初は予算も少なく職員もわずか8名でしたが、開館までに1万冊の蔵書を収集しました。

富山市立図書館との合併と戦災

開館当初から、富山市立図書館との合併が議論されてきました。戦時下の統合の流れもあり、1943年3月、両図書館は合併し、富山市立図書館は廃止されました。合併により蔵書数は9万冊に増加、職員数も31名となり、当時としては全国でも屈指の規模を誇る図書館となりました。しかし、1945年8月2日の富山大空襲で、図書館は焼失。しかし、事前に多くの蔵書を疎開させていたため、約6万5千冊の蔵書は無事でした。

戦後復興と新たな図書館

空襲後、富山県立神通中学校に仮閲覧所を開設し、図書館サービスを再開しました。その後、富山市表町に新館舎を建設、1949年9月10日に開館しました。新館舎では、開架式の閲覧室を設け、利用者の利便性を向上させました。また、移動図書館「移動公民館」を導入し、県内各地へ図書を届ける活動も開始しました。

茶屋町への移転と近代化

1960年代後半には、表町の館舎が手狭になったことから、富山市茶屋町への移転が決定。1969年9月22日、新館舎が開館しました。新館舎はモダンなデザインで、第1回富山県建築賞を受賞しました。この移転を機に、閲覧室の一元化、調査相談の充実、貸出期間の延長など、図書館サービスの改革が行われました。

デジタル化への取り組み

1980年代以降は、コンピューター技術の導入を進め、1990年にはコンピュータシステムの本格稼働を開始。その後、インターネットによる図書検索、予約サービスなどの導入、ホームページの開設など、デジタル化への取り組みを積極的に進めてきました。

貴重なコレクション

富山県立図書館は、郷土資料、特設文庫など、数多くの貴重なコレクションを所蔵しています。郷土資料は16万冊以上を数え、加越能マイクロフィルム資料や杉木文書など、近代以前の貴重な史料も含まれています。特設文庫として、内山文庫、大田文庫、キリスト教文庫、県人文庫、志田文庫、洗足学園富山文庫、中島文庫、廣瀬文庫、間宮文庫など、各分野に特化したコレクションがあります。これらのコレクションは、研究者や県民にとってかけがえのない資源となっています。

現在と未来

現在、富山県立図書館は、地域住民に愛される図書館として、図書の貸出、閲覧、調査相談、デジタル資料の提供など、多様なサービスを提供しています。2024年1月1日に発生した能登半島地震においても、迅速な復旧作業を行い、通常通り開館しています。これからも、県民の生涯学習を支援する重要な役割を果たしていくでしょう。

まとめ

富山県立図書館は、長年にわたり、県民の文化向上と教育発展に貢献してきました。戦災からの復興、デジタル化への対応、地域住民へのきめ細やかなサービスなど、その歴史と取り組みは、地域社会の文化を支える図書館のあり方を示しています。今後も、デジタル技術を活用しながら、より魅力的で利用しやすい図書館を目指していくことが期待されます。

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