寺内ダム

寺内ダムの概要と役割

寺内ダム（てらうちダム）は、福岡県朝倉市に位置し、一級河川である筑後川水系の佐田川に建設されたダムです。このダムは独立行政法人水資源機構が管理しており、高さは83メートルのロックフィルダムとして知られています。筑後川水系のダムの中で、高さが上筌ダム（津江川）に次ぐものであり、その重要性がよく示されています。

寺内ダムは、主に洪水の調整や不特定の利水、灌漑、上水道に供することを目的として設計されました。福岡市や久留米市など両筑地域に水を供給する役割を持ち、松原ダム、下筌ダム、江川ダム、筑後大堰、合所ダムと連携し、北部九州の水資源を効率的に管理しています。ダムによって形成された人造湖は「美奈宜湖」と名付けられ、多くの地域住民に親しまれています。この美奈宜湖は、2005年にダム湖百選にも選ばれ、その美しい景観が評価されています。

過去の経緯

寺内ダムの建設は、1964年に筑後川水系が「水資源開発促進法」に基づく「水資源開発水系」に指定されたことから始まりました。これにより、筑後川水系の水資源開発基本計画が策定され、寺内ダムは江川ダムと共に北部九州における水需求を満たすための重要なプロジェクトとして計画されました。1970年に建設作業が開始され、1978年に完工しました。

疲弊した水資源の救済

完成当初、福岡地域では大規模な水不足が発生しましたが、寺内ダムは普段使用しないデッドウォーターも活用し、福岡市への水供給に貢献しました。また、寺内ダムと江川ダムは共に大きな水供給能力を有しており、筑後地域や福岡地方への上水道・工業用水・農業用水の供給に重要な役割を果たしています。

地元住民との関係

ダムの建設に伴い、147世帯が水没することとなりましたが、地元住民との補償交渉は迅速に進められました。この交渉は約1年半で妥結し、情報開示を徹底したことで信頼を築き、地域住民との関係を良好に保つことができたのです。これは過去の蜂の巣城紛争から得た教訓を生かした形でもあります。

最新の状況

2023年7月、梅雨前線による豪雨で増水が発生し、ダムは緊急放流を行いました。朝倉市に近い位置にあるこの都市型ダムは、アクセスも良く、観光スポットとしても利用されています。ダム湖の美奈宜湖は地域の癒しの場であり、地元住民にとって大切な存在となっています。

寺内ダムは、治水と利水の両方の面で北部九州の水問題を解決するための大切なインフラストラクチャーであり、地域の持続可能な発展に貢献し続けています。

もう一度検索