小笠原丸

小笠原丸（おがさわらまる）

小笠原丸は、1945年8月22日に悲劇的な沈没事件を経験した、日本初の国産海底電纜敷設船です。この船は、当時の逓信省によって建造され、海底ケーブルの敷設作業に従事しました。その歴史は、1905年に遡り、三菱長崎造船所で建設が開始されました。

船の歴史

逓信省は、既存の敷設船「沖縄丸」では海底ケーブル敷設作業の需要に応えきれなくなり、新たな船の建造を決定しました。その結果、1905年6月に三菱長崎造船所と契約を結び、数度の遅延を経て、1906年6月に進水、同年8月15日に正式に引き渡されました。船名は、小笠原諸島に向けた海底線の敷設作業に由来します。

就役後は、「沖縄丸」と共に新規ケーブルの敷設やメンテナンス業務を担当しました。1910年には、遭難したロシア船の乗員を救助するなどの活躍もありました。しかし、太平洋戦争の影響を受け、1945年には軍の管理下で海底ケーブル事業を続けました。

1945年2月には、敵の航空機による攻撃を受けるも沈没は免れ、同年8月時点では北海道と樺太を結ぶケーブルの敷設作業を行っていました。終戦を迎えた後、樺太にいる逓信省の関係者の引き揚げ命令を受けて、8月17日に稚内を出航しました。その直後、混乱した樺太の情勢下で、苦難の道が待ち受けていました。

沈没の詳細

1945年8月20日の深夜、小笠原丸は大泊を出港しました。翌21日には稚内に到着し、そこでは乗客の一部が下船しましたが、再び出航しました。特に、当時の状況を考慮すると、782名の疎開者を乗せた小笠原丸の運命はすでに暗示されていました。

そして、22日の早朝4時20分頃、小笠原丸は増毛沖でソ連の潜水艦L-12によって攻撃を受け、沈没しました。調査によると、646名が命を落とし、残された生存者はわずか61名でした。船体は水深約60mの海底に横たわっており、その位置は漁師によって早期に特定されました。

遺骨収集と記念碑

1951年には、地元の村上高徳による取り組みで遺骨収集が始まりますが、その作業は非常に困難を伴いました。水深や海流の影響により、多くの業者が乗り出すことを拒否する中、村上氏は自己資金を投じて作業を続けました。収集された遺骨は314柱に及びましたが、資金難に苦しむ結果となり、彼は破産の危機に追い込まれました。

近年、2024年には探索チームが再度調査を行い、小笠原丸は原型をほぼ保った状態で発見されました。現在、北海道増毛町の町営墓地には「小笠原丸殉難碑」が建立され、毎年8月22日には地元民によって慰霊祭が行われています。また、三船遭難慰霊之碑も、地域での追悼の場として機能しています。

船長とその後

小笠原丸の船長は蛭子康氏で、彼は1906年に就任しました。その後の運航に関与し、数多くの苦難を乗り越えながら、その使命を全うしました。小笠原丸は、日本の海底ケーブル敷設船の歴史において重要な位置を占めており、今なおその記憶は多くの人々の心に刻まれています。

もう一度検索