山口洋

山口洋：保育業界の改革者、そして企業経営の波瀾

山口洋氏は、1961年京都府生まれの実業家である。大和証券での法人営業やM&A経験を経て、1993年に有限会社ジェイ・プランニング（後の株式会社JPホールディングス）を創業。当初はオフィスコーヒーサービスやアミューズメント施設へのサービス提供など多様な事業を展開していたが、その後、保育事業への参入を決断する。

1999年に保育事業に着手し、2001年には埼玉県新座市に最初の保育所を開設。その後、2002年には東京都認証保育所の第一号施設を開園するなど、保育業界におけるパイオニア的な役割を果たした。同年、ジャスダック市場への上場も実現し、企業としての基盤を確固たるものとした。

山口氏の功績は、企業経営のみに留まらない。2008年以降は、厚生労働省を始め、内閣府、東京都、経済産業省など、数多くの政府機関の委員を歴任。少子化対策や保育政策に携わり、日本の保育環境の改善に多大な貢献を果たした。特に、保育事業者検討会委員としての活動は、日本の保育制度改革に大きな影響を与えたと言えるだろう。

彼の専門性と経験は、数々の政策立案に活かされ、保育業界全体のレベル向上に貢献した。多忙な日々の中で、聖徳大学大学院博士課程を修了（児童学）するなど、常に学び続ける姿勢も持ち合わせていた。

しかし、山口氏のキャリアは順風満帆ではなかった。2015年2月、体調不良を理由にJPホールディングスの代表取締役社長を辞任。その後、筆頭株主として、2017年9月に臨時株主総会の開催を請求、取締役全員の解任を要求する事態に発展した。この株主総会では、山口氏の提案は否決されたものの、この出来事は、企業経営における彼の信念と決断の強さを改めて示すものとなった。

山口氏の経歴を振り返ると、大和証券時代から培われたビジネススキルと、保育業界への情熱、そして政府機関での政策立案経験が、彼のキャリアを形成する上で重要な要素となっていることがわかる。彼の保育事業への参入は、単なるビジネスチャンスの追求ではなく、社会貢献への強い意志に基づいていたと言えるだろう。

また、山口氏の幼少期からの人間関係も興味深い。京都市立修学院小学校時代には、後の慶應義塾大学教授である中村伊知哉氏や、元観光庁長官の溝畑宏氏と同学年であり、彼らと共にしたいたずら話なども公表している。中村氏は後にJPホールディングスの社外取締役に就任しており、幼少期の友人関係が、後の人生に影響を与えた一例と言えるだろう。

山口氏の著書『子育て支援ビジネス事業化計画資料集』『元証券マン日本の保育を変える！』は、彼の保育事業への取り組みと、その経験に基づいた知見が凝縮されている。これらの書籍は、保育事業に関わる人々にとって貴重な情報源となっている。

山口洋氏の生涯は、成功と挫折、そして社会貢献と企業経営の両面を兼ね備えた、極めてドラマチックなものである。彼の経験は、今後の日本の保育業界、ひいては日本の社会全体にとって、貴重な教訓と示唆に富むものと言えるだろう。

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