山崎章郎

山崎 章郎（やまざき ふみお）

山崎章郎は、1947年に福島県東白川郡塙町で生まれた日本の医師であり、文筆家です。棚倉藩の御典医を曾祖父に持ち、父は中学校で教鞭をとる家庭に育ち、4人きょうだいの末っ子として育ちました。

福島県立安積高等学校を卒業後、千葉大学医学部へと進み、1975年に同学部を卒業しました。医師としてのキャリアは、千葉大学医学部附属病院第一外科での勤務から始まります。その後、1984年には千葉県八日市場市（現在の匝瑳市）の市民病院で消化器科医長を務めるなど、臨床医としての経験を積みました。

山崎氏のキャリアにおいて特筆すべき転換点となったのは、1991年に聖ヨハネ会桜町病院のホスピス科部長に就任したことです。ホスピスとは、がんなどの病によって余命宣告を受けた患者さんが、最期の時を心穏やかに過ごせるように支援する専門施設です。ここで、彼は多くの終末期にある患者さんとその家族に向き合うことになります。

ホスピスでの日々の経験は、彼の文筆活動の原点となりました。1990年に上梓した著書『病院で死ぬということ』は、当時の日本の終末期医療や死生観に一石を投じる作品となりました。この作品は、ホスピスでの具体的なエピソードを交えながら、病院という場所で「死を迎える」ことの意味や、患者さんや家族が抱える葛藤、そして医療者としての自身の内面を赤裸々に綴っています。この書籍は大きな反響を呼び、1991年には日本エッセイストクラブ賞を受賞。さらに1993年には市川準監督によって映画化され、より多くの人々に「死」という普遍的なテーマについて考える機会を提供しました。

桜町病院でのホスピス医としての活動を経て、山崎氏は2005年に新たな挑戦を始めます。在宅診療を専門とするケアタウン小平クリニックを開院し、その院長に就任しました。これは、終末期ケアの場を病院やホスピスから地域へと広げ、「住み慣れた自宅で最期を迎えたい」と願う人々を支えるための選択でした。在宅医療の現場でも、患者さん一人ひとりの尊厳と意思を尊重するケアを実践しています。

文筆家としても精力的に活動を続け、『ここが僕たちのホスピス』、『続・病院で死ぬということ』、『僕が医者として出来ること』、『家で死ぬということ』など、ホスピスや在宅医療、死生観、そして「いのち」について深く考察した数多くの著書を発表しています。また、他の医師や専門家との共編著、さらには終末期ケアや死生観に関する書籍の翻訳も手掛けており、その活動は多岐にわたります。

山崎章郎氏は、医療の最前線、特に終末期ケアの現場で培った豊かな経験と深い洞察を基に、医師として、そして文筆家として、日本の医療や社会に対して重要なメッセージを発信し続けています。彼の著作や活動は、私たちに「どのように生き、どのように死を迎えるか」という根源的な問いを投げかけ、より人間らしい最期を迎えるための選択肢や支援のあり方について、示唆を与え続けています。

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