山本海苔店

株式会社山本海苔店

株式会社山本海苔店は、日本の伝統的な食品である海苔を製造・販売する有数の食品メーカーです。その創業は江戸時代後期の嘉永二年（一八四九年）に遡り、今日まで一七〇年以上の長い歴史を有しています。初代である山本徳治郎が、現在も本社を置く東京都中央区日本橋室町の地に、海苔の専門店として暖簾を掲げたのが始まりです。

同社の最も特筆すべき功績の一つは、「味附海苔」を創製したことです。明治二年（一八六九年）、山本海苔店は当時としては画期的な、味を付けた海苔製品を開発しました。これにより、従来の乾海苔や焼き海苔とは異なる、手軽で風味豊かな海苔の楽しみ方を提案し、日本の食卓に新たな変化をもたらしました。この味附海苔は、その品質と革新性が認められ、同年に宮内省（現在の宮内庁）の御用達を賜る栄誉に輝いています。

沿革

一八四九年（嘉永二年）: 初代山本徳治郎により、日本橋室町の現所在地に海苔専門店として創業。
一八六九年（明治二年）: 味附海苔を開発・製造販売を開始。同年、宮内省の御用達となる。
一九四六年（昭和二一年）二月: 事業基盤強化のため、株式会社に改組。
一九六一年（昭和三六年）二月: 品質向上と研究開発を目的として、東京都大田区大森東に山本海苔店研究所を開設。
一九六五年（昭和四〇年）六月: 事業拡大に伴い、本社新社屋が竣工。
一九七一年（昭和四六年）九月: 生産能力増強のため、神奈川県秦野市に秦野作業所を設置。
二〇〇三年（平成一五年）一〇月: 秦野作業所が食品安全管理基準HACCPの認証を取得し、秦野工場に名称を変更。これに合わせて、山本海苔研究所も秦野工場内に移設し、研究と生産の一体化を進める。
二〇〇七年（平成一九年）九月: 海外事業展開の足がかりとして、中国・上海に丸梅商貿（上海）有限公司を設立。
二〇一四年（平成二六年）七月三一日: 神奈川県の秦野工場での操業を停止。
二〇一四年（平成二六年）九月一日: 海苔の一大産地である佐賀県佐賀市の久保泉第二工業団地に最新鋭の佐賀工場を新設し、本格的に稼働を開始。
二〇一五年（平成二七年）一一月: 佐賀工場がHACCP認証を取得。
二〇一六年（平成二八年）八月: 物流業務の効率化を図るため、体制を移管。

商標

山本海苔店の象徴として、創業以来「丸に梅」のマークが使用されており、「まるうめマーク」として広く認知されています。この梅の紋は、梅の花が咲く時期と、海苔をはじめとする海藻が採取される時期が重なることに由来しています。春の訪れと共に収穫される海からの恵みへの感謝を表すシンボルとされています。梅の実や梅干し自体との直接的な関連はありませんが、お客様の要望に応じ、梅干しの風味を活かした海苔製品も提供されています。

その他の取り組み

革新的な試みとして、一九六五年（昭和四〇年）に完成した日本橋本社ビルには、当時としては極めて珍しい、日本初とされるドライブスルーが設置されていました。自動車を利用する顧客層に向けた利便性の高いサービスでしたが、一九九一年（平成三年）頃のビル建て替えに伴い、その役目を終えました。

関連情報

東都のれん会: 東京の老舗企業が集まる東都のれん会の一員として、伝統的な事業姿勢を継承しています。
山本陽子: 長年にわたり同社のCMキャラクターを務め、同一企業のCMキャラクターとしての契約期間が最も長いとしてギネス世界記録に認定されています。
金曜ロードショー: 過去に、日本テレビ系列で放送されていた人気映画番組「金曜ロードショー」のスポンサーを務めていたことがあります。
山岡鉄舟: 味附海苔が誕生する契機に関わった人物です。明治二年（一八六九年）、明治天皇の京都行幸の際、山岡鉄舟が手土産について二代目店主の山本德治郎に相談したことから味附海苔が生まれたと伝えられています。この縁により、書家としても知られる鉄舟が初代商品のパッケージに商品名を揮毫し、現在に至るまで封函シールには鉄舟の書による文字が用いられています。

山本海苔店は、創業以来培ってきた高い品質と技術、そして革新的な精神をもって、日本の海苔文化の発展に貢献し続けています。

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