山梨ワイン

山梨ワインは、山梨県で醸造されるワインの総称であり、日本で最初に地理的表示の認定を受けたワインです。山梨県は、日本におけるワイン生産の中心地であり、多くのワイナリーが存在します。ブドウ栽培は、昼夜の寒暖差が大きい甲府盆地を中心に、水はけの良い斜面で行われています。主要なブドウ品種は、山梨原産の甲州種で、その他にマスカット・ベーリーA、デラウェアなどが用いられます。

概要

山梨県は、日本のワイン生産の中心地であり、多くのワイナリーが点在しています。甲府盆地は、昼夜の寒暖差が大きく、ブドウ栽培に適した気候です。土壌は花崗岩や安山岩で、水はけの良い斜面を利用してブドウ畑が広がっています。主要なブドウ品種は、甲州種、マスカット・ベーリーA、デラウェアなどです。甲州ワインは、山梨県産のワインの中でも、特に甲州種から造られるワインを指します。

2015年7月、山梨ワインは日本で最初の地理的表示として「山梨」の認定を受けました。2019年には、生産基準がさらに厳格化されました。山梨ワインとして認められるためには、以下の条件を満たす必要があります。

山梨県で収穫されたブドウのみを使用する。
指定された42品種のブドウを使用する。
一定の糖度以上のブドウを使用する。
山梨県内で醸造、貯蔵、容器詰めを行う。
アルコール度数は、辛口で8.5%以上、甘口で4.5%以上である。
補糖、補酸などに一定の制限がある。
品種名に「甲州」と記載する場合は、100%使用する。

この制度は、フランスのワインAOCとほぼ同じです。ただし、フランスのAOCではブドウ畑の最大収穫量が定められているのに対し、山梨では規制されていません。また、フランスでは使用が禁じられているアメリカ原産のデラウェア種が許可されているのも特徴です。

歴史

前史

山梨県で栽培されているブドウの甲州種は、1186年から栽培されている日本固有の品種です。別の伝承では、718年に僧・行基がブドウを持った薬師如来の夢を見たことが、山梨県のブドウ栽培の始まりともされています。

山田宥教と詫間憲久

1872年、山田宥教と詫間憲久が、清酒の醸造技術を応用して甲州種からワインを醸造したのが、日本におけるワイン醸造の始まりとされています。山田は、横浜で外国人がワインを飲む姿を見てワインづくりを始めました。詫間は、甲府の商人であり、詳細は不明です。彼らは、寺院の土蔵を改装して醸造場とし、味噌づくり用の圧搾機を応用した手搾り式圧搾機を使いました。1873年には、横浜の外国人居留地の酒販店からワインの空き瓶を仕入れ、ワインを詰めて販売を始めました。1874年には、白ワインと赤ワインを合わせて約2700リットル製造した記録があります。さらに、ブドウの搾りかすを使ったブランデーの製造も始めました。しかし、経営は行き詰まり、1876年には資金援助を求める文書を送りましたが、取引停止となり、多額の借金を抱えて廃業しました。1877年の内国勧業博覧会では、ワインとブランデーが高く評価されました。

大久保利通と藤村紫朗

大久保利通は、ヨーロッパでワイン文化に触れ、日本でもブドウ栽培を推進しました。山梨県では、県令の藤村紫朗が、1876年に甲府城跡に勧業試験場を建設し、ブドウを植え付けました。1877年には、大日本山梨葡萄酒会社を設立し、ワイン醸造所を開設しました。しかし、欧州種のブドウ苗は気候に合わず、ほとんどが枯れてしまいました。その後、アメリカ品種に切り替えて栽培に取り組みました。1879年になると、勧業費の支出をめぐって批判が高まり、1883年には勧業試験場が停止、1884年にはワイン醸造所も操業を停止しました。

高野正誠と土屋龍憲

大日本山梨葡萄酒会社は、醸造技術を指導できる人材育成のため、高野正誠と土屋龍憲をフランスに派遣しました。留学先はボルドーやブルゴーニュではなくトロワでしたが、ワインだけでなくシャンパンやビールの製造法も学ぶことができました。1879年に帰国後、最初のワインを醸造し、翌年には大量のワインを醸造しました。しかし、販売ルートの確立に失敗し、フィロキセラ害によって欧州種の苗も全滅したこともあり、1883年以降は醸造量を大幅に減らし、1886年には解散しました。土屋は、大日本山梨葡萄酒会社の醸造器具を譲り受けて甲斐産葡萄酒醸造所を興し、東京に販売会社を開きました。高野は、ブドウ栽培と醸造技術の普及に努めました。

宮崎光太郎

宮崎光太郎は、大日本山梨葡萄酒会社解散後、土屋龍憲、土屋保幸とともに甲斐産葡萄酒醸造所を設立しました。ワインの品質向上に力を入れましたが、販路の開拓に苦戦しました。そこで、東京にワイン販売専門店「甲斐産商店」を開業し、「甲斐産葡萄酒」を販売しました。その後、ワインを薬用としても販売する戦略をとり、宮内省御用を賜るなど、販路を拡大しました。また、甘味ブドウ酒の製造も開始し、業績を盛り返しました。宮崎は、ブドウ栽培農家を救済するなど、地域貢献にも尽力しました。1912年には、ブドウ園と醸造所を観光施設「宮光園」として公開しました。1934年には、甲斐産商店を大黒葡萄酒株式会社に改組し、経営を立て直しました。

第二次世界大戦中

第二次世界大戦中、ワインに含まれる酒石酸カリウムナトリウム（ロッシェル塩）が、対潜水艦用の水中聴音機に利用できることがわかり、海軍の要請によりワイン製造が奨励されました。しかし、ワインの味は二の次で、大量生産が優先されたため、品質は低下しました。

第二次世界大戦後

戦後、ワイン産業は低迷しましたが、高度経済成長期に入り、ヨーロッパの食文化が普及するにつれて、ワインは再び親しまれるようになりました。

生産量

山梨県における甲州種の栽培面積は減少傾向にあります。一方で、ワイン需要は増加しており、山梨のワイナリーはブドウ不足に悩まされています。山梨県産のワインは、日本産ワイン全体の約3割を占めています。長野県、山形県、北海道では、ワイン用ブドウの栽培面積は増加しています。

問題点

山梨ワインには、以下のような問題点があります。

農業協同組合から入荷するブドウの品質にばらつきがある。
ブドウ農家の多くが生食用ブドウの栽培に熱心である。
ワイナリーとブドウ農家との間に信頼関係が築けていない。
甲州種の栽培農家の高齢化が進んでいる。
醸造用ブドウ栽培の効率化、収益化ができていない。
甲州種のイメージが定着していない。

出典

Wikipedia

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