川越東高等学校

埼玉県川越市久下戸に所在する川越東高等学校は、男子のみを受け入れる私立の高校です。地元では親しみを込めて「カワトン」あるいは「東高」と呼ばれています。

学校概要と教育方針

本校は「文武両道」の精神を重んじ、明朗かつ質実剛健な校風の醸成を目指しています。付属中学校を併設しない独立した男子校であり、独自の教育体制を構築しています。特定の特別進学コースは設けておらず、個々の生徒の希望と学力に応じたきめ細やかなコース編成が特徴です。

学級編成は、1年次で基本的な内容を学ぶ普通コースと、より高度な学習を行う選抜制の理数コースに分かれます。2年次からは、将来の進路希望とこれまでの学習成績に基づき、さらに専門性の高い4つのコースに細分化されます。難関国立大学の理系学部を目指す「理数I類」、同じく難関国立大学の文系学部を目標とする「理数Ⅱ類」、そして国公立大学や難関私立大学への進学を目指す「普通理系」と「普通文系」です。これらのコース間での変更は、進級時の希望と成績によって検討される場合があります。

進路指導と実績

本校の進路指導は、多様な目標に対応できるよう設計されています。特に理数コースは難関国立大学への現役合格を目指しており、基本的に指定校推薦制度は利用しない方針です。しかし、早稲田大学、上智大学、東京理科大学など、一部の指定校推薦枠は用意されています。

「文武両道」を実践する生徒が多く、のびのびとした校風の中で育まれる気質からか、慶應義塾大学よりも早稲田大学を選択する傾向が見られます。近年は、東京大学への合格者を輩出するなど、着実に難関大学への進学実績を積み重ねています。

例えば、2025年度の大学入試においては、国立大学では東京大学（文科一類）1名をはじめ、一橋大学3名、北海道大学4名、東北大学3名、筑波大学4名、横浜国立大学4名、東京学芸大学3名、東京外国語大学1名、国際教養大学1名などが合格しました。私立大学では早稲田大学31名、慶應義塾大学25名、上智大学12名、東京理科大学59名など、多くの合格者を輩出しています。さらに、国公立医学部に3名、私立医学部にも複数名の合格者が出ています。

施設と環境

広大な敷地内には充実した教育施設が整備されています。学校のシンボルともいえる赤レンガ造りの巨大な正門は「東門」と呼ばれています。体育館はバスケットボールコート6面分に相当する広さを持ち、漫画『アオのハコ』に登場する体育館のモデルになったことでも知られています。また、日本の高校や大学の講堂と比較しても最大級の規模を誇る大講堂を有しており、その音響設備や照明設備も整っています。校舎は体育館と平行して建てられた横長の構造で、建物の中に大小の講堂が収容されています。生徒の憩いの場として学食も利用できます。その他、人工芝が敷設された第一グラウンドや、複数面のコートを持つマルチコートなど、運動施設も充実しています。近年では校内Wi-Fi環境が整備され、iPadが導入されるなど、教育の情報化にも積極的に取り組んでいます。

学校生活とイベント

本校の制服は、男子校の伝統を受け継ぐ黒詰襟学生服（標準型）で、銀色のボタンが5個ついています。

毎年9月に開催される文化祭は「翔鷺祭（しょうろさい）」と呼ばれています。この文化祭は、例年著名人による公演やお笑い芸人によるステージが行われるなど、大学の学園祭のような自由でリベラルな雰囲気に満ちています。

部活動

「文武両道」の精神は部活動にも色濃く表れています。多くの運動部が関東大会やインターハイといった全国レベルの大会に出場するなど、優れた成績を収めています。特に野球部は元プロ野球選手が顧問を務めた経験があり、ラグビー部は2020年度に記念すべき第100回全国高等学校ラグビーフットボール大会の埼玉県予選で優勝し、「花園」への出場を果たしました。その他にも、アメリカンフットボール部、ソフトテニス部、テニス部、サッカー部、陸上競技部、バスケットボール部、バレーボール部、柔道部、剣道部、卓球部、少林寺拳法部、ソフトボール部、スキー部、ウエイトトレーニング部など、多様な運動部が活動しています。

アクセス

主な最寄り駅からは無料のスクールバスが運行されており、生徒の通学をサポートしています。東日本旅客鉄道（JR東日本）川越線南古谷駅からは約7分、東武東上線上福岡駅からは約15分、西武新宿線本川越駅および大宮駅からは約25分で到着します。また、西武バス「治水橋堤防」バス停からも徒歩でのアクセスが可能です。

沿革

川越東高等学校は1984年 4月に開校しました。それ以前の1983年 6月には第一グラウンドの土地が取得され、開校に向けて校舎の建設が進められました。開校後も施設の拡充は続けられ、体育館（1984年 9月、1986年 7月）、武道館（1985年 7月）、第二グラウンド（1985年 5月）、講堂（1987年 8月、1988年 7月、1989年2月）、図書館（1992年 6月）、プール（1992年 7月）、合宿所（1994年11月）などが次々と完成しました。近年では、マルチコート（2005年 7月）、第三グラウンド（2008年 1月）、第一グラウンドの人工芝化（2017年 1月）が行われたほか、2018年 4月には校内Wi-FiとiPadが導入されるなど、教育環境の整備が進められています。

著名な関係者

本校からは各界で活躍する多くの卒業生を輩出しています。学術分野では経済学者の簗田優氏、スポーツ分野では元サッカー選手の吉田悟氏、ラグビー選手の岸直弥氏、プロ野球選手の高梨雄平氏らがいます。芸術分野では映画監督の石井裕也氏、作曲家の伊藤賢治氏、漫画家のかねこ統氏が知られています。財界では実業家の合田武広氏などが挙げられます。

卒業生の同窓会は「ひんがし会」として活動しており、会員相互の親睦促進や母校への支援を行っています。

本校は、三浦糀氏による漫画作品『アオのハコ』において、「栄明中学高等学校」として物語の舞台の一つとなっています。

本校は、星野学園中学校・星野高等学校、星野学園小学校を兄弟校としています。

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