布袋

布袋：伝説の僧侶とその多様な影響

布袋(917年没)は、唐代末期から五代時代にかけて中国に実在したとされる伝説的な僧侶です。浙江省寧波市出身と伝えられていますが、詳細な出自は不明です。本名は契此(かいし)または釈契此(しゃくかいし)といい、常に大きな袋を背負っていたことから「布袋」と呼ばれました。その風変わりな姿と、分け隔てなく人々に施しを行う慈悲深い性格から、人々を幸福感で満たす不思議な力を持つ人物として知られました。

布袋の生涯と伝説

布袋に関する記録は断片的で、多くの伝説が語り継がれています。雪の中でも体の上だけに雪が積もらなかったり、人の吉凶を言い当てたりするといった不思議な力を持つと伝えられています。また、禅問答のような謎めいた問答や、心の真実や穏やかな境地を求める歌を残していることも知られています。

その死についても不思議な逸話が伝わります。天復年間(9世紀末)に亡くなったとされますが、その後も別の州で目撃されたという記録があり、まるで仙人かのような神秘的な最期を遂げたと言われています。没後すぐに、江南地方で布袋を描いた図像が現れたという記録も残っています。死の間際に残したとされる名文から、弥勒[[菩薩]]の化身ではないかという説も生まれました。

しかし、布袋と禅宗の関係については議論があります。10世紀後半の『宋高僧伝』には禅との関係に触れられていませんが、11世紀初頭の『景徳傳燈録』では、禅門の達人として紹介されています。

中国と日本における布袋信仰

中国では中世以降、布袋の姿が弥勒仏の姿形として描かれるようになり、寺院に安置されるようになりました。現在でも、中国では「布袋和尚(Bùdài héshàng)」という呼称よりも「弥勒(Mílè)」と呼ばれ、西欧では「マイトレーヤ(Maitreya)」と呼ばれています。

日本には鎌倉時代に禅画の題材として伝わり、庶民の間では福の神として信仰を集めました。室町時代後期には七福神の1柱となり、現在でも広く信仰されています。肥満体であることから、広い度量や円満な人格、富貴繁栄の象徴とされ、袋は「堪忍袋」とも解釈されています。

当初は弥勒[[菩薩]]の化身として描かれていた布袋図ですが、次第に人間的な表情を描いた「腹さすり布袋図」や「眠り布袋図」なども描かれるようになりました。七福神として定着したのは江戸時代後期です。

布袋を題材とした芸術作品

布袋は、多くの芸術作品に題材として取り上げられてきました。代表的な例としては、葛飾北斎、歌川国芳、月岡芳年といった浮世絵師による作品があります。また、姫路市にある通宝山弥勒寺には、日本最大の石造布袋坐像があります。

関連語彙

布袋の名は、様々な動植物や地名にも用いられています。例えば、ホテイウオ、ホテイアオイ、ホテイソウ、ホテイラン、ホテイチク、ホテイシメジなどがあります。これらの名称は、布袋の丸々と太った姿や、袋を背負った様子に由来していると考えられます。

まとめ

布袋は、その生涯にまつわる謎や、信仰の広がり、芸術作品への影響などを通して、現在も人々の心を捉え続ける存在です。風変わりな外見と慈悲深い性格、そして不思議な力を持つとされるその存在は、時代を超えて人々に幸福と安らぎをもたらし続けています。

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