引きこもり

引きこもりの概念と現状

引きこもり（ひきこもり）とは、仕事や学校に通わず、家庭に閉じこもり、家族以外との交流がほとんどない状態を指します。この言葉は、1980年代にアメリカ精神医学会の診断基準に使われた「Social Withdrawal」を日本語に翻訳したことに由来しています。

日本における引きこもりの現状

日本の内閣府が2023年に発表した報告書によれば、15歳から64歳の引きこもりの人口は約146万人にのぼります。このひきこもりの状態は、通常6カ月以上続くことが定義されており、最近では特に新型コロナウイルスの影響で、引きこもりを始める人の割合が増加しました。調査によれば、約20%のケースがコロナ禍を契機に始まったとされています。

引きこもりはもともとは若年層に注目されていましたが、近年では40歳から64歳の中高年層においても増加が見られます。内閣府の調査によると、この中高年層における引きこもりの人数は61万3000人に達し、その多くが以前に社会と接触を持っていたにもかかわらず、さまざまな理由から引きこもりに至ったとされています。

引きこもりの引き金

引きこもりを引き起こす要因には、様々なものがあります。特に、学生時代には不登校やいじめ、社会人になってからは職場になじむことができず退職することが多く、また人間関係のトラブルも大きな要因の一つです。近年の調査結果では、男性だけでなく、女性の引きこもりの存在が浮き彫りになっています。内閣府の2023年の調査では、40代から64歳の引きこもり状態にある者のうち、女性が52.3%を占めていることが報告されています。

社会的背景とリスク要因

引きこもりの問題は高学歴家庭や経済的背景に関係が無いことも示されています。職業訓練を受けることなく、社会参加をすることを避けることが、引きこもりになる一因であるとされています。特に高学歴家庭においては、約20人に1人が引きこもりを経験しています。

また、引きこもりの約3割には発達障害が存在しているとのことです。これらの障害は対人関係において苦手意識を持つことが多く、引きこもりを助長する要因となります。

高齢化と長期化の問題

日本では引きこもりが長期化するケースが増えており、引きこもり経験者の平均年齢は33.5歳、また40代以上の引きこもりも25%を占めています。このことは、社会的な支援が必要であることを示していますが、支援の対象が若年層に特化しているため、40代以上は支援を受けられないことが多いとされています。

引きこもりへの支援

引きこもり問題に対して、現在は国や地域の支援機関が利用されています。特に、家族も高齢化が進む中で、孤独に支えられる子どもが多くいる中、支援が求められています。しかし、引きこもりを解消しようとする業者の中には問題のある方法が用いられることもあり、引きこもり本人の人権が侵害されるケースも見受けられます。

世界の引きこもり

引きこもりは日本特有の現象だけではありません。韓国や台湾、香港にも同様の問題が存在しており、特に韓国では若者が多くの孤立を経験しているとされています。2023年にはソウル市が初めて引きこもりに関する調査を行い、多くの若者が職を失ったり、進学に失敗した結果、引きこもりに陥ったと分析されています。

結論

引きこもり問題は、年齢や性別を問わず多くの人々に影響を及ぼしており、その実態は複雑で様々な要因が考えられます。支援の在り方も変化してきており、今後、より多様な形式での支援が求められることが予想されます。これまでの偏見を取り払い、引きこもり当事者が声をあげられる環境作りが急務であると言えるでしょう。

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