弦楽五重奏

弦楽五重奏とは、一般的な弦楽四重奏（第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ）にさらに一本の楽器を加えた編成の室内楽曲、およびその演奏形態を指します。最も一般的な編成は二つあります。一つは、ヴィオラをもう一本加えたもので、ヴァイオリン二本、ヴィオラ二本、チェロ一本という構成になります。もう一つは、チェロをもう一本加えたもので、ヴァイオリン二本、ヴィオラ一本、チェロ二本という構成です。クラシック音楽の有名な作曲家たちは、複数の弦楽五重奏曲を手掛けていても、これらの二つの編成のうち、どちらか一方に特化して作曲していることが多いという特徴が見られます。非常に稀なケースとしては、通常の弦楽四重奏にコントラバスを加えた編成も存在します。

実際の演奏の場では、既存の弦楽四重奏団にヴィオラ奏者またはチェロ奏者を一名迎えて、五重奏として演奏する形態が一般的です。弦楽五重奏を専門とする演奏団体はそれほど多くありません。このとき、加わった奏者が全体のパート構成の中で第1ヴァイオリン側（高音域寄り）を担うか、第2ヴァイオリン側（低音域寄り）を担うかについては、特に決まったルールはなく、奏者や団体の任意に委ねられます。どちらのパートを担当することが多いといった傾向も、特に見られません。

弦楽五重奏曲は、その前身ともいえる弦楽四重奏曲に比べて、作曲された作品の総数はかなり少なくなっています。これは、四つの同族楽器で構成される弦楽四重奏が、高音、中音、低音の音域で絶妙なバランスを取りやすいのに対し、そこに一本楽器が加わることで、全体の音響的なバランスを取ることが難しくなり、作曲における書法がより複雑になるためだと考えられています。それでも、弦楽五重奏曲の中には、聴く者の心に響く、愛らしく、感情に訴えかけるような優れた作品が数多く存在します。その背景には、後期ルネッサンス期以降に発展した現地語による世俗声楽曲であるマドリガルに五声部の作品が多く見られ、そこで既に劇的な対比や効果的な作曲技法が見出されていたことが影響しているのかもしれません。

主な弦楽五重奏曲としては、編成によって代表的な作曲家が異なります。ヴィオラが二本の編成では、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトとヨハネス・ブラームスが特に有名です。アントン・ブルックナーのヘ長調の作品もしばしば演奏されます。モーツァルトは6曲の弦楽五重奏曲を全てこの編成で作曲しており、彼の作品としては珍しく短調の曲を2曲含んでいる点が特筆されます。ブラームスも2曲をこの編成で残しています。また、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、フェリックス・メンデルスゾーン、ミヒャエル・ハイドン、ラルフ・ヴォーン・ウィリアムズもこの編成の作品を書いています。ミヒャエル・ハイドンは合計6曲の五重奏曲を残しており、そのうちよく知られた数曲がこの編成です。ルイージ・ボッケリーニも、ヴァイオリン2、ヴィオラ2、チェロ1という編成で12曲を書いています。

一方、チェロが二本の編成で最も名高いのは、フランツ・シューベルトです。彼のハ長調 D.956は、この編成における傑作として広く知られています。非常に多作だったルイージ・ボッケリーニは、自身が優れたチェロ奏者であったこともあり、ヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ2という編成で実に110曲もの弦楽五重奏曲を残しています。彼のホ長調 G. 275の第3楽章は「ボッケリーニのメヌエット」として特に親しまれています。ドヴォルザークの弦楽五重奏曲にもこの編成のものが含まれます（op.1、op.97）。

さらに珍しい編成として、ドヴォルザークの弦楽五重奏曲第2番ト長調 op.77では、ヴァイオリン二本、ヴィオラ一本、チェロ一本に加えてコントラバスが用いられています。このように、弦楽五重奏はその編成の多様性によって、弦楽四重奏とはまた異なる響きや魅力を持ち、作曲家たちの探求心を刺激してきたジャンルと言えるでしょう。

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