張り子

張り子とは

張り子（はりこ）は、竹や木で組んだ枠や粘土の型に紙を貼り重ねて成形する、伝統的な造形技法です。出来上がったものは中が空洞になっているため、外観からは想像できないほど軽いのが特徴です。「はりぼて」という別名も持ちます。

張り子の歴史

張り子の技術は、2世紀の中国で生まれたとされ、その後アジアやヨーロッパへと広がりました。日本には平安時代頃に中国から伝来し、産室に犬筥（いぬばこ）が飾られていたことが記録に残っています。現在では、日本各地で郷土玩具などに用いられ、その土地の文化を反映した様々な張り子が作られています。

張り子の技法を用いた製品

張り子の技法は、以下のような様々な製品に用いられています。

日用品

提灯

人形

だるま
犬張子：江戸時代に成立した郷土玩具で、犬が安産や子供の健康を祈る守りとして用いられました。
起き上がりこぼし
赤べこ
黄鮒
虎：赤べこと同様に虎を模した張り子で、「張子の虎」という言葉の語源にもなっています。
三春張子人形

その他

ねぶた祭りの山車燈籠
仮面：おかめ、ひょっとこ、きつねの面など

張り子の製法

民芸品の張り子は、まず型に和紙を糊で貼り重ね、乾燥させて立体的な芯を作ります。この芯に胡粉と膠を混ぜた塗料を塗り重ねて下地とし、さらに彩色を施します。

芯の作り方は2種類あります。

1. 木や焼き物で作った凸型に和紙を貼り重ね、乾燥後に小刀などで切り開いて型を外し、切り口を繋ぎ合わせる方法。
2. 粘土で作った原型を石膏などで型取りし、分割した凹型に和紙を貼り込んで成形し、乾燥後に型から抜き、繋ぎ合わせる方法（張抜）。

張り子に使われる紙は「混凝紙（こんくりがみ）」と呼ばれ、日本の伝統的な製法では「張子紙」と呼ばれる和紙が使われるのが一般的です。

各国の張り子

張り子の技術は、世界各地で独自の発展を遂げています。

イタリア

イタリアのヴェネツィアでは、カーニバル用の仮面が張り子の伝統的な製法で作られています。粘土の原型を石膏で型取りした凹型に紙を貼り乾燥させ、硬化速度の遅い石膏を下地として使用します。19世紀には、ローマ教皇ピウス7世のティアラがパピエ・マシェの技法で作られました。

スペイン

スペインのバレンシアでは、火祭りに使われる人形「ニノット」がかつて張り子の技法で作られていました。ヒガンテスとカベスドスはパピエ・マシェの技法で製作されます。19世紀には、スペインのギター職人アントニオ・デ・トーレスが、胴体を紙で張り合わせた張り子ギターを製作しました。

日本の張り子作家

荒井良
前田ビバリー

関連項目

* 乾漆造

もう一度検索