彰義隊

彰義隊：激動の幕末を駆け抜けた旧幕府軍の軌跡

彰義隊は、1868年（慶応4年）、江戸幕府の征夷大将軍・徳川慶喜の警護を主な目的として結成された部隊です。渋沢成一郎や天野八郎といった中心人物を中心に、幕臣や旧幕府支持者、そして志士たちが集まりました。鳥羽・伏見の戦い後、慶喜が江戸城に移り、その後上野寛永寺に謹慎すると、幕臣らによる慶喜の復権や助命を願う動きが活発化しました。この機運の中、尊王恭順有志会が結成され、後に「大義を彰らかにする」という意味から彰義隊と命名されました。

結成と組織

彰義隊の結成は、慶喜の謹慎に不満を持つ幕臣たちの呼びかけから始まりました。当初は少人数でしたが、元一橋家家臣の渋沢成一郎を招いたことなどから、徐々に規模を拡大。諸藩の藩士や旧幕府支持者なども加わり、千人を超える大規模な組織へと成長しました。旧幕府は彰義隊の存在を懸念しつつも、江戸市中取締の任を委任することで、隊の活動をある程度コントロールしようとしました。しかし、隊の構成員は多様で、幕臣だけでなく、町人や博徒、侠客なども含まれていました。そのため、隊内の意見や行動も必ずしも統一されていませんでした。

寛永寺を拠点に、そして分裂

江戸城無血開城後、慶喜が水戸へ退去すると、彰義隊は寛永寺を拠点として活動を続けました。日光輪王寺門跡を擁し、徳川将軍家霊廟の守護を名目に、江戸に残留しました。しかし、新政府軍との武力衝突を望む隊士も多く、隊はますます拡大し、最盛期には3000～4000人にも達しました。この頃、慶喜の江戸退去を機に、渋沢成一郎は隊の江戸からの撤退を提案しますが、天野八郎は江戸に残留すべきだと主張し、隊は分裂します。渋沢は隊を離脱し、振武軍を結成して独自に活動を始めました。

新政府との対立と上野戦争

江戸開城後、旧幕府陸軍兵士による犯罪が増加し、彰義隊も新政府への敵対姿勢を強めました。新政府は、彰義隊の武装解除を図りますが、衝突が頻発。ついに、新政府軍による彰義隊討伐が決定します。1868年7月4日、上野戦争が勃発しました。新政府軍は、彰義隊が籠る寛永寺を包囲攻撃。激しい戦闘の末、彰義隊は敗北し、寛永寺も壊滅的な被害を受けました。この戦争には、新政府軍側の近代兵器も大きな役割を果たしました。彰義隊側の戦死者数は266名、新政府軍側は30名余りと記録されています。

戦後と彰義隊士たちのその後

上野戦争後、逃亡した隊士の一部は各地で抗戦を続けました。捕らえられた隊士たちは厳しい取り調べを受け、処遇も様々でした。天野は投獄後、数ヶ月で死亡しています。一方、大塚霍之丞のように、後に明治政府に登用された者もいました。彰義隊の壊滅後、江戸は東京と改称され、明治新政府の首都として新たな歴史が始まりました。上野戦争で戦死した彰義隊士たちの遺体は、当初は放置されていましたが、後に円通寺に埋葬されました。その後、元隊士たちの尽力により、上野に彰義隊の墓が建立され、現在も慰霊が行われています。

彰義隊の評価

彰義隊は、旧幕府への忠誠心から戦った集団として捉えられる一方、新政府軍への攻撃や暴行事件も起こしており、その評価は複雑です。隊員たちの出身や思想も多様で、組織としての結束も必ずしも強固ではなかったと考えられています。上野戦争での敗北は、近代兵器を装備した新政府軍との力の差、そして隊内の不統一などが原因として挙げられます。しかし、彰義隊の歴史は、激動の幕末期を象徴する出来事の一つとして、現在も語り継がれています。

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