後深草院少将内侍

後深草院少将内侍について

後深草院少将内侍（ごふかくさのいんのしょうしょうないし）は、生年不詳ながら1265年頃に没したとされる、鎌倉時代初期の女流歌人です。女房三十六歌仙の一人に数えられ、藤原信実の娘であり、藻璧門院少将や弁内侍の妹にあたります。また、花山源氏の資光王の妻でもありました。

生涯と歌壇での活躍

姉である弁内侍と共に、後深草天皇が幼少の頃から宮中に仕え、その在位期間を中心に歌壇で活躍しました。特に連歌を得意とし、その才能は姉の弁内侍と共通していました。『続後撰和歌集』以降の勅撰集や歌合などに多くの作品が収録されているほか、『弁内侍日記』や『菟玖波集』にも作品が残されています。

特筆すべきは、『弁内侍日記』における少将内侍の登場頻度の高さです。この日記は、弁内侍と少将内侍の姉妹による歌日記と見なせるほど、少将内侍の存在が大きく描かれています。また、弁内侍の記述から、少将内侍が父である藤原信実よりも先に亡くなっていたことがわかります。

逸話と恋愛の噂

宮仕えを始めた当初、姉の弁内侍は春宮弁として皇太子時代の後深草天皇に仕えましたが、少将内侍は在位中の後嵯峨天皇に内侍として仕えたと考えられています。このことが影響してか、後嵯峨院との連歌や和歌のやり取りには、恋愛関係を匂わせるものが存在します。

例えば、八月十五夜の名月の日に雨が降った際、後嵯峨院が「連歌でもしよう」と少将内侍を誘ったという逸話があります。この時、後嵯峨院は弁内侍を話題に出しながら少将内侍を誘っているように見えることから、後嵯峨院が少将内侍に特別な感情を抱いていたのではないかという推測を呼んでいます。後嵯峨院の寵妃の一人である大納言三位（西園寺公経の娘）は、この話を聞いて「この恋草の御連歌 思ひいでなるべし」と評したと伝えられています。

少将内侍の死後、ある人物が彼女の依頼で執筆あるいは書写していた草子を送ってきたという話が『続古今和歌集』に記されています。また、少将内侍の死を悼み、弁内侍が縁のある人々に追善の和歌を詠ませたという記録も残っています。土御門入道内大臣（中院通成）もその一人です。

作品について

少将内侍の作品は、勅撰集や準勅撰連歌集、定数歌、歌合などに収録されています。しかしながら、残念なことに、彼女の家集は現存していません。

勅撰集
『続後撰和歌集』
その他勅撰集

準勅撰連歌集

『菟玖波集』

定数歌・歌合
多数の歌合、定数歌に作品が残る

私家集
現存せず

関連人物

藤原信実 (父)
女房三十六歌仙
後嵯峨天皇
後深草天皇
藻璧門院少将
弁内侍 (姉)
弁内侍日記

参考文献

今関敏子 『校注弁内侍日記』 1989年5月 和泉書院 ISBN 978-4870883567
森田兼吉 「『弁内侍日記』論二 : 弁内侍と少将内侍」 『日本文学研究巻26』 1990年11月 梅光女学院大学日本文学会
藤川功和 「建長三年九月十三夜影供歌合再考」 『国文学攷 no.192・193』 page.11-22 2007年3月31日 広島大学国語国文学会
藤川功和 「宝治元年『院御歌合』内部考証 : 構成、勅撰集入集状況、出詠歌、判詞を手がかりに」 『表現技術研究』 : Bulletin of the Research Center for the Technique of Representation no.6 page.33-43 2010年3月19日 広島大学表現技術プロジェクト研究センター
* 安井久善 『宝治二年院百首とその研究』 1971年11月30日 笠間書院

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