後鳥羽院下野

後鳥羽院下野

後鳥羽院下野（ごとばのいんのしもつけ、生没年不詳）は、鎌倉時代初期に活躍した女流歌人であり、女房三十六歌仙の一人として知られています。彼女は日吉社小比叡の禰宜である祝部允仲の娘であり、源家長の妻でありました。子どもには源家清や藻璧門院但馬がいます。

経歴

下野はその初期に皇后宮である坊門院範子内親王に仕えていました。1203年頃、後鳥羽院のもとに仕官し、1204年には彼女の夫である源家長と結婚しています。彼女は後鳥羽院の歌壇の有力なメンバーとなり、 famed 『新古今和歌集』の編纂にも関与しました。

元々は信濃と呼ばれていた彼女ですが、1206年8月以降は下野と名乗るようになったようです。その後も『新古今和歌集』をはじめとする多くの勅撰集や歌合に彼女の詩が残されています。

逸話

彼女の夫、源家長は『源家長日記』の中で、13世紀の初めにおける歌壇の状況について記しています。彼の記述によれば、後鳥羽院は当時の女流歌人の少なさを嘆いており、その中で新しい歌人たちが登場してきたことを伝えています。特に、妻の下野も新たな才能として期待されていたのではないかと言われています。

後鳥羽院が流刑地の隠岐から都にいる歌人たちに対して、十題十首の和歌を求めた際に下野もその一員として十首を提出しました。特に「時雨」と題する歌は、後鳥羽院に「昔は遠く」と強い情趣を感じさせたとのことです。この歌は、下野が藤原隆祐に対して収めた唯一の勝利とも言われています。

また、後鳥羽院が流刑されてからも、下野は院の周りにある近臣グループと交流を持っていたようです。院の没後も、彼女は六条派や反御子左派、そして後鳥羽院の近臣たちが集う『春日若宮社歌合』に参加し、歌壇とのつながりを維持していました。ここでは時には寂寥感を表わしたり、自己の境遇に対する思いを詠んだりしました。

彼女が後嵯峨院の治世を祝う際には、「もえ出る春」と称えながら、自らを「谷の埋木」に例えるなど、祝賀の意味を持たないかのような歌を詠んでいます。この詩は、負の判定を覚悟しつつ、自己の不遇を世界に訴えたい意志が見え隠れしています。

作品

下野は多くの詩を残しており、その作品は後の勅撰集や歌合に収められています。しかし、彼女の私家集に関しては現在伝わっていない状況です。

脚注

彼女の生涯や作品に関する詳細は、安井久喜や藤平泉の研究においても触れられています。彼女の歌や活動を知ることで、鎌倉時代初期の女流歌人の一翼としての重要性が感じられます。次世代の若い歌人たちにとっても、彼女の存在は大きな刺激となるでしょう。

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