源家長

源家長（みなもと の いえなが）は、鎌倉時代前期に活躍した公家であり、優れた歌人としても知られています。醍醐源氏高明流の出身で、大膳亮を務めた源時長の子として生まれました。官位は従四位上、但馬守に至り、歌人としては新三十六歌仙の一人に数えられています。

経歴

家長は、まず後白河院の第十皇子である承仁法親王にお仕えした後、建久7年（1196年）からは後鳥羽院の近臣である非蔵人として宮廷に奉仕しました。その後、蔵人、右馬助、兵庫頭といった京での役職や、武蔵介、備前介、備後守、美作守、但馬守といった地方の要職を歴任しました。特に但馬守在任中の承久3年（1221年）に勃発した承久の乱とその後の混乱は、家長の人生にも影響を与え、一時的に一切の官職を辞することとなります。しかし、世情が落ち着きを取り戻し始めた嘉禄3年（1227年）には、長年にわたる誠実な奉仕が評価され、従四位上へと昇進を果たしました。

歌人としての活動と人物

家長は和歌に秀でており、その才能を認められて建仁元年（1201年）には和歌所の開闔（かいこう、実務責任者）に任じられました。この役職において、『新古今和歌集』の編纂という国家的な事業に深く関わり、その実務を統括する中心的な役割を担いました。

一方で、自らも積極的に歌人として活動し、当時の主要な歌合に数多く出詠しました。正治2年（1200年）の『院後度百首』、建仁元年（1201年）の『千五百番歌合』、元久元年（1204年）の『元久詩歌合』、また年代不詳の『道助法親王五十首』、寛喜2年（1230年）頃の『洞院摂政百首』、寛喜4年（1232年）の『日吉社撰歌合』など、その記録は多岐にわたります。これらの活動を通して、歌人としての名声を高めました。

家長の詠んだ歌は、勅撰和歌集にも多数採られています。『新古今和歌集』に3首が入集しているのをはじめ、他の諸集と合わせて合計36首が採録されており、宮廷歌壇における確固たる地位を示しています。

家長は、同時代の著名な歌人である藤原定家や藤原家隆とも親しい交流がありました。また、早くに親を亡くしたことで知られる鴨長明に対して、同情的な態度で接していたことも伝えられています。

家族においても歌の才能は受け継がれており、妻である後鳥羽院に仕えた女房の後鳥羽院下野、そして二人の間に生まれた娘の藻璧門院但馬と共に、親子三代で勅撰歌人という稀有な存在となりました。

著書

家長の著作として、『源家長日記』が知られています。これは日々の出来事を記した日記とは異なり、和歌所開闔という立場から見た後鳥羽院や『新古今和歌集』の歌人たちとの関係性などが記録されています。当時の宮廷歌壇の様子や編纂事業の背景を知る上で、貴重な史料となっています。

系譜

父：源時長
母：不詳
室：後鳥羽院下野（祝部允仲の娘）
子息：源家清、源長清
* 息女：藻璧門院但馬、七条院堀河（藤原雅長室）

源家長は、鎌倉時代初期の激動期に公家として務めを果たしつつ、和歌所の中心人物として『新古今和歌集』の完成に貢献し、歌人としても確かな足跡を残した人物と言えるでしょう。

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