得度

得度（とくど）とは

得度は、仏教において僧侶になるための出家儀式を指します。この儀式は、仏教教団の先輩僧侶による承認を受け、戒律を守ることを誓うことを条件としています。得度の意義やその背景には、歴史的な変遷があるため、その成り立ちを理解することが重要です。

歴史的背景

仏教はインドで誕生し、その後中国や日本に伝わりました。中国においては、仏教が国家による統制を受けることとなり、僧侶になる人数を制限する規制が導入されました。当初は、僧侶になることは比較的自由でしたが、国家が税金や労役の免除を与えたことにより、多くの人が出家するようになり、結果として国家の財政に影響を与える事態が発生しました。これに伴い、得度は国家の許可制へと移行しました。

北宋の賛寧は著書『大宋僧史略』の中で、こうした僧籍に関する問題を指摘しています。国家の特権を求める出家者が増える一方で、出家者の数を制限するために国家がさまざまな抑制策を講じることとなりました。このようにして、国家公認の僧が僧籍に入ることが義務付けられ、特定の証明書である度牒も発行されるようになりました。

日本における得度の制度

日本でも、古代の律令制度の下、僧侶になるための具合的な手続きが定められました。得度を受けるためには、特定の年に定員が設けられ、官からの許可を得る必要がありました。原則として、年に10名までの得度者が許可されることが通常でした。得度者には公式に認められた証明書である度牒が発行され、氏名や年齢、本貫地などが記載され、師僧の保証が必要でした。

また、得度を受けた者は課役を免除される特権を有しましたが、農民などが無許可で僧侶になる「私度僧」という存在もありました。これは、律令によって禁じられた行為であったものの、実際には長期間修行を続けている者が正式な僧侶として認められる場合もありました。

『続日本紀』には、隠れて10年以上修行した者に得度を許可した記録もあります。私度僧の存在は違法ではありましたが、修行をしっかり行っている者に対しては一定の容認が見られ、その中でも特に優秀とされた者は正式に得度させられる方針が取られていました。

私度僧の中には、後に功績を残した円澄や景戒といった著名な僧侶がいました。得度に関するこうした歴史は、日本の仏教の発展に大きな影響を与えています。

結論

得度は、ただの儀式ではなく、仏教の教義や国家の制度が反映された重要なプロセスです。この制度を通じて、僧侶は教団内での地位を確立し、信仰を深める機会を得ると同時に、歴史を背負った使命を果たしていくこととなります。得度の意味を理解し、今後の仏教のあり方を考えさせられるものです。

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