御成

御成（おなり）とは

「御成」とは、貴人、特に皇族や将軍、大名といった身分の高い人が外出することを指す言葉です。一般的には、天皇・皇后・皇太后・皇太子・皇太子妃以外の皇族の外出を指しますが、その使い方は厳密ではなく、幅広い意味で使用されることがあります。

御成の歴史

室町時代には足利将軍、安土桃山時代には豊臣秀吉、江戸時代には徳川将軍や大名の外出が「御成」と表現されることが多くありました。特に江戸時代には、将軍が臣下の邸宅を訪問することが「御成」として特別な意味を持つようになります。

豊臣秀吉の御成

豊臣秀吉は、前田邸に7度、その他にも毛利邸などに御成を行った記録が残っています。

徳川将軍の御成

江戸時代において、将軍が臣下の邸宅を訪問する「御成」は、主従関係を世に示すための重要な機会とされていました。御成を受けることは、各藩にとって名誉なことであり、大規模な準備と費用が費やされました。

元和9年（1623年）には、徳川秀忠を尾張藩が迎えた際の様子が「元和御成記」として記録され、その後の御成の様式が確立されるきっかけとなりました。御成の際には、江戸屋敷の大規模な改装（庭園や能舞台の造成、改装）や、諸道具の新調、随伴者の土産品の調達など、多大な労力と費用が費やされました。

元禄15年（1702年）初頭、徳川綱吉から加賀藩に対して御成の意向が伝えられると、加賀藩は本国から職人を呼び寄せて準備を開始しました。同年4月の御成までに費やされた総費用は約36万両（現在の価値に換算すると約1,080億円相当）に達し、当時の華やかな様子がうかがえます。

御成に関連する地名

現在でも、御成という言葉は地名として残っています。

御成街道
御成町
御成橋
御成台
御成門駅

まとめ

御成は、単なる外出ではなく、身分の高い人の権威を示すとともに、受け入れる側にとっても重要な意味を持つ特別な行事でした。江戸時代には、そのための準備や費用も莫大なものとなり、当時の社会や文化を反映するものであったと言えるでしょう。

参考文献

『徳川将軍の御成』徳川美術館、2012年。
「(毛利輝元)座敷本餝之次第」『茶書研究　第8号』宮帯出版社、2019年。

関連項目

武家屋敷
* 江戸藩邸

もう一度検索