復興小学校

復興小学校とは

復興小学校とは、1923年（大正12年）の関東大震災で被災した小学校を、復興事業の一環として鉄筋コンクリート（RC）造で再建したものを指します。特に東京市では、震災で大きな被害を受けた117校もの小学校が建て替えられました。本稿では、東京市の状況を中心に、復興小学校の歴史的背景、建築の特徴、そしてその後の変遷について詳しく解説します。

関東大震災と小学校の被害

震災前の東京市では、木造の小学校が一般的でした。しかし、関東大震災によって、市内の小学校の約3分の2が焼失または倒壊し、残りの多くも大きな被害を受けました。無傷だった小学校はわずか2校という状況でした。震災以前からRC造の小学校も建設されていましたが、その数はごくわずかでした。

復興小学校の建設

震災後、東京市は1924年度から1928年度にかけて、5か年計画で復興小学校の建設を進めました。この際、耐震性・不燃性を高めるため、すべての小学校をRC造で建設することが決定されました。設計は東京市臨時建設局が統一規格に基づいて行い、建設は各区が担当しました。建設費の一部は、1924年6月11日に公布された「東京市立小学校復興建設費補給規程」に基づき、東京市から補助されました。また、電化、ガス設備、蒸気暖房、水洗トイレといった近代的な設備も導入されました。

RC造小学校の分類

大正末期から昭和初期にかけて建設されたRC造の小学校は、大きく以下の3つに分類できます。

復興小学校: 震災で被災した小学校のうち、焼失区域内の117校を東京市営繕の設計で再建したもの。明石小学校や九段小学校などが代表例です。52の学校では、隣接して小公園が設けられ、災害時の避難場所としても機能するよう都市計画に取り込まれました。
改築・新設小学校: 震災前からRC造での建替えが計画されていた小学校や、震災後に新たに建設された小学校。初期には、各区が民間の建築家に設計を依頼した事例もありましたが、やがて東京市営繕が設計を担うようになりました。外観デザインは、表現主義的なものから装飾のないインターナショナルスタイルへと変化しました。
新市域の小学校: 1932年に東京市に編入された地域では、児童数の急増に対応するため、主に木造校舎が建設されました。RC造の小学校は、編入前に計画されていたものに限られました。

戦前期のRC造小学校の事例

以下に、戦前に建設されたRC造小学校の事例をいくつか紹介します。これらの小学校は、復興小学校だけでなく、改築・新設されたRC造小学校も含まれます。現存するもの、すでに解体されたもの、用途が変更されたものなど様々です。

明石小学校 (1925年建設)：復興小学校の初期の事例。2010年まで現役校舎として使用されましたが、その後建て替えのため解体されました。
九段小学校 (1926年建設)：旧校舎の一部を保存しつつ建て替えられ、2018年に竣工しました。パラボラアーチが特徴的です。
坂本小学校 (1926年建設)：復興小学校ではなく、2022年に解体されました。
窪町小学校 (1926年建設)：震災後に開校した学校で、2006年に解体されました。
元町小学校 (1927年建設)：1998年に廃校となりましたが、一部を保存し活用する計画が進められています。
阪本小学校 (1928年建設)：都内最古の小学校の一つでしたが、2017年に建て替えのため解体されました。
十思小学校 (1928年建設)：廃校後、中央区の施設として利用されています。
早稲田小学校 (1928年建設): 復興小学校ではありませんが、震災による被害があり、新校舎を建設。現在も小学校の現役校舎として使われています。
常盤小学校 (1929年建設)：現在も小学校の現役校舎として使用され、東京都選定歴史的建造物にも指定されています。
泰明小学校 (1929年建設)：現役の小学校で、東京都選定歴史的建造物です。
黒門小学校 (1930年建設)：改修工事が行われ、現役校舎として利用されています。
広尾小学校 (1932年建設): 当時は郡部であったため、東京府営繕によって設計されました。現在も小学校の現役校舎として使われています。
四谷第五小学校 (1934年建設)：廃校後、吉本興業東京本社として利用されています。
* 高輪台小学校 (1935年建設)：震災後に新設された小学校で、現在も小学校の現役校舎として使われています。

現存する校舎

現在、中央区立泰明小学校など4校の復興小学校が現役小学校として利用されています。また、他の用途に転用された施設も存在します。

まとめ

復興小学校は、関東大震災からの復興の象徴であり、日本の近代建築史においても重要な存在です。これらの小学校は、耐震性・不燃性に優れたRC造で建設され、近代的な設備を備えていました。また、都市計画の中で公園と一体的に整備された例もあり、当時の復興に対する熱意が伝わってきます。現存する校舎は、歴史的遺産として大切に保存・活用していくべきでしょう。

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