徳家

徳家（とくや）とは

徳家は、大阪府大阪市中央区千日前に位置していた鯨料理の専門店で、その創業は1967年に遡ります。創業者の大西睦子は、自らの母親が経営していた料亭の復興を目指して、当初は「ふぐ料理店」として開業しましたが、来客数が伸び悩む中、鯨肉専門店への転換を決断しました。この移行は、大阪の地域的背景や自身の幼少期の食文化に影響されたものです。

ハリハリ鍋の誕生

鯨料理店への転換後、大西は独自の料理スタイルを模索し、特に「ハリハリ鍋」を名物料理として確立しました。ハリハリ鍋は、鯨の赤身肉と新鮮な水菜を、昆布とカツオブシから取った特製だしで煮込むシンプルながら絶品の鍋料理です。具材には鯨肉の「尾の身」と水菜、豆腐やシイタケ、また餅が加わり、さっぱりとした味付けが鯨肉の旨味を引き立てていました。この鍋スタイルは、日本の鯨料理に新たな風を吹き込むものであり、当時は安価で庶民にも親しまれる食材でした。

商業捕鯨禁止に伴う影響

1982年には国際捕鯨委員会が商業捕鯨の一時停止を決定し、日本も商業捕鯨から撤退。その後、鯨肉の流通は激減し、徳家は調査捕鯨から得られる鯨肉のみでメニューを維持せざるを得ない状況となりました。そんな厳しい状況の中でも、大西は「鯨の味を忘れないで」という思いから、毎年春に「鯨まつり」を開催し、鯨文化の継承に努めました。

捕鯨再開運動への参加

90年代から大西は、商業捕鯨の再開を目指す運動に積極的に関与しました。国際捕鯨委員会の会議にもオブザーバーとして参加し、自らの料理を振る舞うことで鯨肉の美味しさを広めようとしました。しかし、反捕鯨団体の活動や国際的な風潮に直面し、捕鯨文化を守るという使命感に駆られた大西は、様々な困難と戦いました。

閉店とその後の継承

2019年5月25日、鯨料理の文化を伝承してきた徳家は、76歳の大西の決断により閉店しました。商業捕鯨の禁止や鯨料理の衰退とともに、後継者がいなかったこともその一因でした。最終日には数多くの常連客が来店し、感謝の言葉を交わしながら、鯨食文化の未来を願う姿が見受けられました。さらに、のれん分けした長野県の「信州徳家」は、現在も鯨料理を提供しており、鯨食文化の存続に寄与しています。

徳家の文化的意義

徳家は大阪の鯨食文化を守る象徴的な店舗であり、商業捕鯨と食文化の拡張に寄与してきました。大西睦子の情熱と努力により、鯨料理は地域の食文化の一部として存在し続け、多くの人々に愛されてきたのです。今後も、この文化が次の世代に引き継がれ、鯨食文化としての重要性を再認識していくことが求められています。

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