心臓移植について
心臓移植、または心移植とは、重度の
心不全や進行した心疾患に苦しむ患者に対して、
脳死した
ドナーから
心臓を移植する外科
手術のことを指します。一般的には、患者の傷んだ
心臓を取り除き、
ドナーの
心臓を移植します。これにより、患者は命を救われ、生活の質の向上が期待されますが、移植後は
免疫抑制剤を服用しなければなりません。
心臓移植の歴史
心臓移植の研究は、20世紀の初めから始まりました。1905年、
フランスの外科医
アレクシス・カレルにより、動物間での
心臓移植が行われました。その後、1960年代には犬において同所性心移植が成功した記録があります。1967年には、南アフリカのクリスチャン・バーナードが初の人間に対する
心臓移植を実施し、これは
心臓移植の新たなスタート地点となりました。日本では、
1968年に和田寿郎医師が国内初の
心臓移植を行いましたが、その後の法的・社会的な問題により、移植医療は長らく発展しませんでした。1997年、臓器移植法が施行され、初めて移植が法的に認められるようになりました。
各国の体制
世界中で
心臓移植のネットワークが構築されています。アメリカでは、全米臓器分配ネットワーク(UNOS)がその役割を担い、適切なレシピエントの選定と臓器分配を行っています。日本でも臓器移植ネットワークが設けられ、移植を希望する患者が登録されています。移植が行われる際には、医学的緊急度、待機期間、
血液型の適合などが考慮されます。
手術は、まず
ドナーから
心臓を摘出することから始まります。胸を開き、
心臓周囲を処理した後、
ドナー心は特殊な保護液に浸しながら搬送されます。レシピエント側では、人工心
肺の準備を行った後、患者の
心臓を摘出し、新しい
心臓を移植します。
手術の約98%は同所性心移植であり、両心房法や両大
静脈法が用いられます。
術後の管理と予後
心移植後は拒絶反応や
感染症を防ぐために、
免疫抑制剤の服用が必須です。これらは
心筋生検を通じて監視され、
合併症が早期に発見されます。日本における心移植の10年生存率は96%と高いものの、先進国と比較して
ドナー数の不足が大きな課題であり、待機期間が長くなりがちです。
日本の心臓移植の現状
日本では
脳死からの臓器移植が進みつつあるものの、
ドナー数が不足しており、待機患者は多くが補助人工
心臓を必要とします。また、近年では小児向けの
心臓移植も特別な条件の下で実施可能となりました。さらに、豚から人への移植試みが行われており、新たな
治療法として注目されています。
結論
心臓移植は、重度の心疾患を持つ患者にとって命を救う重要な
治療法です。
手術を受けた患者の多くは、その後の生活の質を著しく向上させることができています。今後、医療の進展とともに、
心臓移植がより多くの患者に提供されることが期待されます。