想いを捧げる乙女のメロディー

想いを捧げる乙女のメロディー

『想いを捧げる乙女のメロディー』は、アダルトゲームブランドensembleより2017年3月24日にリリースされた18禁美少女アドベンチャーゲームです。お嬢様学園への女装潜入をテーマとしたensembleの人気連作「乙女シリーズ」の第6弾にあたります。物語のその後を描くファンディスク『想いを捧げる乙女のメロディー 〜あふれる想いを調べにのせて〜』が、同年11月24日に発売されました。

システム

基本的なシステムは、マウスクリックなどで文章を読み進めていく一般的な恋愛アドベンチャーゲームの形式を採用しています。プレイヤーは主人公の視点で物語を体験し、選択肢によってストーリーが分岐していくことで、5人の攻略対象ヒロインとの関係を深めていきます。

物語

ドイツでのピアノ修行を終えようとしていた主人公、雨桜みさき（あまざくら みさき）は、日本に住む姉の雨坂汐理（あまさか しおり）から一本の電話を受け取ります。その内容は、姉が産休に入るため、自身が音楽教師として勤めている名門お嬢様学園「リーリエ女学園」で臨時教師を務めてほしいというものでした。この学園には、かつて有名な楽器職人だった二人の亡き父親が製作した思い出のピアノが存在しており、姉はそれが間もなく博物館へ寄贈され、二度と弾く機会が失われることを告げ、みさきに帰国を強く勧めます。父親のピアノを演奏することが長年の夢だったみさきは、この誘いを受け入れ、日本への帰途につきます。

しかし、リーリエ女学園に到着したみさきを待っていたのは、教師用の衣装ではなく、学園の制服でした。実は、父親が遺したピアノに触れることができるのは、年に一度の学園祭「リーリエ・フロイライン・シュールフェスト」の場のみであり、さらにその演奏資格は学園の「生徒」に限られていたのです。かくして、みさきは臨時音楽教師という立場でありながら、生徒として学園に潜入するという、二重の顔を持つ困難な学園生活を送ることになります。

楽曲・スタッフ

本作の主題歌は、オープニングテーマ「eyes to eyes」とエンディングテーマ「キミへ贈るメロディー」がいずれもDucaによって歌われています。ファンディスクでは、オープニングテーマ「未来のメロディー」とエンディングテーマ「カンタービレ♪」もDucaが担当しています。また、ファンディスクには挿入歌「One Love」が収録されています。

主要なスタッフとして、キャラクターデザインをHiten、kakao、師走ほりお、みこが手掛け、シナリオは無義歩が担当しています。音楽はミリオンバンブーが制作しています。

評価と反響

発売後の本作は一定の反響を得ました。発売月の2017年3月における売上ランキングでは、アダルトゲーム販売サイトGetchu.comの集計で7位、ゲーム雑誌『BugBug』の集計で10位にランクインしました。年間集計では、両媒体ともに上位には入りませんでした。

ファンディスク『あふれる想いを調べにのせて』も、発売月の2017年11月にはGetchu.com、BugBugのどちらの集計でも12位を記録しています。こちらも年間集計では上位圏外となりました。

ユーザーからの人気を示す投票では、本作は発売月の2017年3月にGetchu.comのユーザー人気投票で9位を獲得しています。年間での人気投票や「萌えゲーアワード」では、いずれの部門でも上位にはランクインしませんでした。

批評

『BugBug』2017年6月号には、本作の詳細なレビューが掲載されています。レビュアーは、主人公が教師と生徒という二つの立場を演じることで生まれるギャップを特に評価しており、普段はヒロインたちと和やかな学園生活を送りながらも、教師として接する場面では真剣に音楽に向き合う主人公の姿に引き込まれたと述べています。また、女装ものジャンルにおける定番ともいえる、ヒロインとの入浴や着替えの場面といったシチュエーションがしっかりと描かれている点も肯定的に評価されています。

特に感情を揺さぶられたルートとして挙げられているのが、主人公と同じピアニストでありライバルでもある野々宮美亜のルートです。学園祭での演奏者として選ばれるカルテットは一組だけという設定の中、父親のピアノを弾く最後の機会を得ようとする主人公にプレイヤーが感情移入する一方で、ライバルである美亜の懸命な努力が描かれます。レビュアーは、いつしかライバルとしてだけでなく教師として美亜を指導する立場になっていた主人公に対し、美亜が「雨桜先生に勝つために雨桜先生にピアノを教えてほしい」と頼み込むシーンで深く感動したと語っています。物語終盤で主人公の女装が明らかになった際にも、美亜の中で主人公の存在がかけがえのないものになっており、男性として自然に受け入れる流れが丁寧に描かれている点も高く評価されています。

関連情報

本作からは、園谷千夏と小石川琴音の抱き枕カバーや、ゲームのキービジュアルを用いたタペストリーなどのグッズが販売されています。また、本作の主人公である雨桜みさきは、同じくensembleが制作した「乙女シリーズ」の他作品、『乙女が結ぶ月夜の煌めき』（2018年）、『シャイニー・シスターズ 〜女装主人公アイドルプロジェクト〜』（2019年）、『星の乙女と六華の姉妹』（2021年）にもゲストキャラクターとして登場しています。

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