慢性リンパ性白血病

慢性リンパ性白血病（CLL）/小リンパ球性リンパ腫（SLL）

慢性リンパ性白血病（CLL）は、成熟したBリンパ球が異常に増殖する血液のがんです。白血病細胞は、骨髄、リンパ節、末梢血で増加します。欧米では比較的多い病型ですが、アジア人には少ないとされています。CLLと小リンパ球性リンパ腫（SLL）は、本質的に同一の疾患であり、CLL細胞が主にリンパ節で増殖する場合をSLLと呼びます。現在ではCLL/SLLとして単一の疾患として扱われます。

概要

CLLは、CD5陽性の表面抗原を持つ成熟Bリンパ球が、末梢血と骨髄で自律的に増殖するリンパ性腫瘍です。進行は緩やかで、無治療で天寿を全うする患者もいますが、病期が進むと貧血、血小板減少、日和見感染、自己免疫疾患などを引き起こすことがあります。高齢者や男性に多く、人種的には欧米で多く、アジアでは稀な疾患です。

症状

半数以上の患者は自覚症状がなく、健康診断などの血液検査で偶然発見されることが多いです。初診時に症状がある場合は、倦怠感、体重減少、盗汗（寝汗）などが多く、その他にリンパ節腫脹、発熱、肝脾腫、皮疹、易感染症などが起こることがあります。病気が進行すると、リンパ節腫脹や脾腫が拡大し、貧血や血小板減少が現れ、自己免疫性疾患や日和見感染も併発しやすくなります。

疫学

欧米では全白血病の20〜30％を占める一般的な病型ですが、アジアでは少なく、日本では全白血病の2％程度です。アメリカに移住した日系人にも少ないことから、環境や食事よりも人種による差が大きいと考えられています。高齢者に多く、診断時の平均年齢は約70歳です。また男性に多く、男女比は2〜2.5：1程度です。

検査・診断・鑑別

血液検査が基本となります。末梢血リンパ球数が5000個/μl以上で、増加している細胞がB細胞性でCD5陽性であり、骨髄でリンパ球が30％以上であればCLLと診断されます（骨髄検査は必須ではありません）。主な鑑別対象は、前リンパ球性白血病（PLL）、T-CLL、成人T細胞[[白血病]]、ヘアリーセル白血病、リンパ腫の白血病化などです。

原因

原因は不明です。日本人には少なく欧米で多いですが、アメリカで暮らす日系人では少ないことから、遺伝的要因が考えられていますが、原因となる遺伝子は特定されていません。染色体変異は様々見つかっており、13q-, 11q-, 17p-, 6q-, 12トリソミーなどが多く見られます。放射線、化学物質、ウイルスなどとの因果関係は認められていません。

治療

CLLは進行が緩慢で、無治療でも長期生存が可能な患者も少なくありません。病期分類によって治療手段が異なり、リンパ球の増加のみで症状がない場合は、経過観察を行います。病期が進み、リンパ節腫大、脾肝腫、貧血、血小板減少などが現れた場合に投薬治療を開始することが多いです。治療開始の判断基準としては、(1)6ヶ月以内に10％以上の体重減少、強い倦怠感、盗汗、発熱などの症状、(2)貧血や血小板減少、(3)著しい脾腫、リンパ節腫大、(4)リンパ球数が2ヶ月の間に50％あるいは6ヶ月で2倍の増加、などが挙げられます。

治療法としては、フルダラビン単剤、フルダラビンとシクロフォスファミドの併用、リツキシマブの併用（FCR療法）などが有効です。近年では、イブルチニブ、ベネトクラックスなどの分子標的薬も使用されています。治療の目的は、病勢のコントロールと生存期間の延長であり、治癒は期待できません。再発または難治性のCD20陽性のCLLに対しては、抗CD20抗体オファツムマブが使用されます。

初回治療としてはイブルチニブまたはFCR療法が標準治療となり、BR（ベンダムスチン+リツキシマブ）も選択肢となります。二次治療はイブルチニブ、FCR、抗CD20抗体オファツムマブ、抗CD52抗体アレムツズマブ、VenR（ベネトクラックス+リツキシマブ）などから選択されます。17p欠失のある場合やSD/PDの場合などは同種造血幹細胞移植も考慮されます。

病期分類

アメリカではRai分類、ヨーロッパではBinet分類が用いられます。

経過・予後

CLLには進行の早い群と遅い群があり、免疫グロブリンH鎖遺伝子（IgVH）の突然変異の有無で予後が異なります。IgVHの突然変異がない場合は、進行が早く予後が悪い傾向があります。CD38やZAP-70タンパクの発現も予後予測に役立ちます。

広義の慢性リンパ性白血病

成熟Bリンパ球性のCLL以外にも、リンパ系の白血病で細胞の成熟傾向が失われていないものは、広義の慢性リンパ性白血病あるいはCLL類縁疾患に含まれます。B細胞性（前リンパ性白血病、ヘアリーセル白血病、リンパ腫の白血病化、形質細胞白血病）とT細胞性（T細胞顆粒リンパ球性白血病、前リンパ性白血病、成人T細胞[[白血病]]/リンパ腫、セザリー症候群）などがあります。

前リンパ球が多いCLLは、B細胞性の前リンパ性白血病（B-PLL）との境界例であり、CLL/PLと呼ばれることもあります。

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