懐竹抄

懐竹抄（かいちくしょう）

『懐竹抄』は、編者の名が不明な楽書であり、特に横笛に関する詳細な知識をまとめています。文中には、大神惟季（1026年 - 1094年）に基づく伝承が記されているものの、実際には12世紀末から13世紀の中頃に成立したと考えられています。

概要

この書は、二部に分かれており、前半では横笛、特に竜笛に関するさまざまな情報を提供しています。竜笛の由緒や、使用される笛竹の種類、楽器の構造、演奏方法、音の調子や口伝の詳細、さらには奏者にまつわる逸話や伝承について詳述されています。後半には、横笛に限らず、筝や琵琶といった他の楽器に関する音律や調に関する考察がなされています。

伝本

本書は、群書類従の中の管絃部第343巻に含まれています。近世の雅楽関係者の間で広く普及しており、音楽史の研究にも不可欠な資料として活用されています。この文献を通じて、現在の演奏法とは異なる演奏スタイルが存在したことを示す貴重な資料ともなっています。

特に、吉川英治の小説『宮本武蔵』において、横笛に関連する書物として印象的に取り上げられているものの、群書類従本と比較するとそこには忠実な引用が見られない点があります。このように、文学作品からも多大な影響を与えながら、雅楽に関する知識が広まったことが伺えます。

研究と影響

『懐竹抄』の情報は、近世の音楽に関する研究において、特に演奏方法などの面での重要な参考資料としての位置を占めています。例えば、馬淵卯三郎や南谷美保の研究によって、17世紀の雅楽演奏の実態や様式が考察されています。これにより、江戸時代末期の雅楽がどのように演奏され、どのような音楽様式が存在したのかを探る手掛かりとなるのです。

本書は、古典音楽や伝統楽器に対する理解を深めるための一助となるだけでなく、雅楽をはじめとする日本の音楽文化の重要な一部を成す文献でもあります。歴史的、文化的な視点からも大きな意味を持つ一冊と言えるでしょう。

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