戦国遺文

戦国遺文

『戦国遺文』は、東京堂出版によって刊行された、戦国時代の貴重な古文書を集成した史料集です。このプロジェクトは、杉山博と下山治久が、後北条氏に関連する古文書の編纂を試みたことから始まりました。彼らが着手した『小田原遺文』の編纂は、平安から鎌倉時代の史料を扱う『平安遺文』及び『鎌倉遺文』と同様に、戦国時代の文書集成の構想へと発展しました。

1989年の9月には、後北条氏に関する古文書の集成が開始され、完結までの間に全6巻がまとまりました。その後も武田氏、今川氏、古河公方家に関する文書や房総地域に関連する資料が次々と刊行されました。特に2009年には、近畿地方の佐々木六角氏に関連する資料が収録された編が発行されました。

この編纂プロジェクトの特徴は、各大名家の当主や家臣が発給した文書を年代順に整理し、必要に応じて棟札や奥書なども含めている点です。また、房総編のように特定の寺社に関連する文書を取り上げることもあるため、編者によってその収録基準には差異が見られます。

戦国時代の古文書を集めるこの取り組みは、歴史研究者や学者にとって、戦国時代およびその時代の大名に関する研究に非常に重要な資料を提供するものであると考えられています。しかし、現在の編集が関東地方の資料に偏っているため、日本全体の文書を網羅し刊行するには今後も多くの時間と労力が求められることが予想されます。

各編の概要

1. 後北条氏編: 1989年から1995年にかけて全6巻を刊行し、追加として佐脇栄智による校注の別巻も出版。古文書の充実が図られました。

2. 武田氏編: 2002年から2006年にかけて全6巻が刊行され、甲斐の武田氏に関する4300点以上の文書を収録。編年別に整然と整理されています。

3. 古河公方編: 2006年に刊行され、古河公方家についての資料を提供。

4. 佐々木六角氏編: 2009年に刊行され、近畿地方における戦国時代の重要な情報を提供しています。

5. 今川氏編: 2010年から2015年にかけて全5巻が刊行され、資料が整理されています。

6. 房総編: 2010年から2016年にかけて全4巻及び補遺が発刊され、房総地方における文書が対象です。

7. 瀬戸内水軍編: 2012年に刊行され、瀬戸内地域の水軍に関連する文書が収められています。

8. 三好氏編: 2013年から2015年にかけて全3巻を刊行。

9. 大内氏編: 2016年から2019年にかけて3巻まで刊行されています。

10. 下野編: 2017年から2019年にかけて全3巻が刊行され、下野地方の大名に関する資料を扱っています。

11. 真田氏編: 2018年から2021年にかけて4巻が集中して刊行されました。

12. 土岐・斎藤氏編: 2023年に1巻が刊行され、新しい情報が地域別に提供されています。

このように『戦国遺文』は、日本の戦国時代に関する貴重な記録を集めた重要な文献集であり、これからの研究にも大いに役立つことでしょう。

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