戦場のメリークリスマス

映画『戦場のメリークリスマス』

『戦場のメリークリスマス』（英: Merry Christmas, Mr. Lawrence）は、1983年に公開された大島渚監督の戦争映画です。本作は日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドの共同制作で、独特な視点から捕虜たちの友情と運命を描いています。特に、坂本龍一の音楽は高く評価され、イギリス・アカデミー賞作曲賞を受賞しました。

概要

本作は南アフリカの作家ローレンス・ヴァン・デル・ポストの短編が原作であり、彼自身の抑留体験が描かれています。映画は1942年のジャワ島、日本軍の俘虜収容所が舞台となっており、様々な人間ドラマが展開されます。

第36回カンヌ国際映画祭にも出品され、グランプリの候補とされましたが、惜しくも受賞の機会を逃しました。また、2012年にデジタル修復版が公開され、以降も何度かのリバイバル上映が行われました。

あらすじ

物語は、ジャワ島にある日本軍の俘虜収容所でスタートします。そこで、朝鮮人軍属のカネモトがオランダ人捕虜デ・ヨンに対して犯罪を犯す事件が発生します。この事件を受けて、日本語を理解する英国陸軍中佐ジョン・ロレンスと、日本軍の粗暴な軍曹ハラとの奇妙な友情が深まっていきます。

一方で、ハラの上司ヨノイ大尉は反抗的な英国陸軍少佐ジャック・セリアズを担当することになり、彼に魅了されつつも悩まされます。捕虜たちのプライドや情報提供の問題が絡み合い、物語は次第に緊張感を増します。

クリスマスの日、セリアズとロレンスは独房に入れられますが、ハラの酔っ払いにより釈放されるという、皮肉な展開が待っています。しかし、その後の事件が次々と展開し、捕虜たちの運命は思わぬ方向へと進行していきます。

音楽とキャスト

坂本龍一の音楽が映画全体に流れ、情感を豊かに表現しています。デヴィット・ボウイや坂本龍一など、多彩なキャストが揃い、それぞれの魅力が光ります。特に、ボウイの演技は多くの観客に印象を与えました。

反響と評価

公開当初から多くの支持を受け、特に若い世代の観客に強い印象を与えました。「戦メリ少女」と呼ばれる若い女性たちが映画を鑑賞する現象が起こるなど、時代を超えた人気を誇っています。大島監督は、観客が人間関係に共感する力を信じていたようで、映画のメッセージをその情感で表現しようとしました。

考察

本作は、戦争の実相を描くと同時に、日本独特の文化や道徳観、そして個々の運命の交錯を繊細に描写しています。戦争映画としてハードな戦闘シーンは存在せず、主に人間ドラマに焦点を当てているため、他の戦争映画とは一線を画しています。大島の作品は、戦争におけるさまざまな問題提起を内包しつつ、観客に深い思索を促します。

『戦場のメリークリスマス』は、その音楽やストーリーを通じて、戦争の悲劇と友情の絆を描き、何年経っても色あせない輝きを持っています。

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