戸田博史

戸田博史：国際金融から外交の舞台へ

戸田博史氏は、1951年生まれの日本の外交官であり、ビジネスマンとしてのキャリアを長く積んだ後、異例の経歴で駐ギリシャ特命全権大使に就任した人物です。その経歴は、国際金融の世界での活躍と、日本の外交における新たな潮流を象徴するものです。

華麗なるキャリア：野村證券時代

慶應義塾大学経済学部卒業後、1975年に野村證券に入社した戸田氏は、国際部門を中心に活躍しました。ニューヨーク、ロンドン、スイスと主要都市に駐在し、長年に渡る国際経験を積みました。その間、ノムラバンクスイス社長、債券部長、取締役、専務、副社長COO、そして副会長と、野村證券における要職を歴任。野村證券の経営の中枢を担う「トロイカ体制」の一員として、日本の金融界を牽引しました。特に副社長COO時代には、経営における手腕を発揮し、野村證券の成長に大きく貢献しました。

社長人事における後継候補として名前が挙がるなど、野村證券内での影響力も絶大でした。2009年に野村ホールディングスの顧問に就任後も、その経験と知識は高く評価され続けていました。

異例の抜擢：駐ギリシャ特命全権大使

2010年、戸田氏は駐ギリシャ共和国特命全権大使に就任しました。これは、民間人として初めてギリシャ大使に就任したことであり、当時大きな話題となりました。民主党菅内閣による異例の抜擢とされ、丹羽宇一郎駐中国大使など、民間出身の外交官登用が注目を集める中、戸田氏の経歴もその流れの中で注目されました。ギリシャが深刻な金融危機に直面していた時期であり、その経験と国際的な視野が期待されたことは言うまでもありません。

ギリシャ危機への対応と大使としての活動

大使在任中には、ギリシャの金融危機への対応に尽力しました。毎日新聞のインタビューでは、アイルランドとは異なり、ギリシャの危機は国の構造的な問題であると指摘し、財政赤字問題の解決に全力を挙げる姿勢を強調しました。しかし、大使としての活動においては、一時帰国時に地方自治体を訪問しなかった点が批判を招き、当時の玄葉外務大臣から残念がる発言がなされるなど、課題も残しました。

ポスト大使：多様な活動

大使退任後も、戸田氏は郵船ロジスティクス株式会社の社外取締役やUBS証券株式会社投資銀行部門特別顧問などを歴任し、その活躍は多岐に渡っています。また、外国為替等審議会「円の国際化専門部会」委員を務めるなど、政府の政策決定にも関与し、日本の経済発展に貢献しています。

まとめ

戸田博史氏の経歴は、国際金融の専門家から外交官へと転身した稀有な事例です。野村證券での成功と、ギリシャ大使としての経験は、日本の経済と外交の両面で大きな足跡を残しました。その国際的な視点と豊富な経験は、今後も日本の発展に大きく寄与するものと期待されます。 彼のキャリアは、ビジネスと外交の橋渡しを図る人物像として、今後の日本のリーダー育成においても重要な示唆を与えてくれるでしょう。

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