提灯お化け

提灯お化け（ちょうちんおばけ）

提灯お化けは、日本の妖怪の一種で、提灯の妖怪です。「ちょうちん」「化け提灯」「お化け提灯」「提灯小僧」などとも呼ばれています。江戸時代以降の草双紙やおもちゃ絵、かるたに広くその姿が描かれ、明治・大正時代以降も玩具や子供向けの妖怪関連書籍、お化け屋敷の演出などに見られます。

概要

一般的な提灯お化けの姿は、古くなった提灯が上下に割れ、その割れた部分が口となり長い舌が飛び出し、提灯の上半分には一つ目あるいは二つの目があるというものです。提灯から顔、手、体、翼が生えていることもあります。

江戸時代の絵画には、桶型や小田原提灯型の提灯お化けも描かれています。鳥山石燕は『百器徒然袋』に不落不落（ぶらぶら）という名称で提灯の形の妖怪を描いています。

また、葛飾北斎の『百物語』にある「お岩さん」や歌川国芳の『神谷伊右衛門 於岩のばうこん』など、江戸時代後期に制作された浮世絵も知られています。これらは歌舞伎『東海道四谷怪談』（1825年）における、伊右衛門に殺されたお岩の霊が提灯から姿を現す演出（「提灯抜け」と呼ばれている）や提灯に顔を現す演出から発想され描かれたもので、「提灯お岩」と呼ばれています。

器物の妖怪が多数描かれている絵巻物である『百鬼夜行絵巻』には、江戸時代以前のものと見られる古い作品に提灯が描かれた作品は確認されていません。江戸時代以後には狩野乗信『百鬼夜行之図』などの作例が見られます。

口頭伝承

提灯お化けは非常に有名な妖怪であるにもかかわらず、地域に根ざした具体的な伝承はほとんど残されていません。そのため、妖怪関連の書籍によっては「絵画上でのみ存在する妖怪」として分類されています。子供向けに創作された妖怪とする説もあります。妖怪漫画家・水木しげるの著書では、人を驚かせてその魂を吸い取る「提灯お化け」の話が掲載されていますが、出典となる一次資料の名は挙げられていません。

伝承上において提灯と称される妖怪は、狐や狸が人間を驚かすために化ける、ありふれた妖怪としての表現として各地で見られます。また、提灯火のように器物主体ではなく怪火として伝わっていることも多いです。山形県では古びた提灯のある神社に提灯お化けが現れて人を脅かし、提灯を片付けるとお化けは現れなくなったという昔話もありますが、正体が提灯であったパターンの「化物寺」の類例であると言えます。

脚注

関連項目

日本の妖怪一覧
* からかさ小僧

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