新古今和歌集

新古今和歌集について

『新古今和歌集』、あるいは略称の『新古今集』は、後鳥羽院の勅命に基づいて編纂された、鎌倉時代初期に成立した勅選和歌集です。この歌集は全20巻から成り、和歌の収集や吟味に関する深い美学を反映しており、特に「新古今調」と呼ばれる独自のスタイルを確立しました。

成立背景

和歌の名家である六条家と御子左家が平安時代末期に歌壇で対立していましたが、藤原清輔の死後、御子左家の藤原俊成が影響力を持つようになりました。その後、後鳥羽天皇の即位により、俊成は宮中での和歌の重要なイベントに息子の藤原定家を参加させるなど、家の地位を強化しました。『新古今和歌集』の編纂は、後鳥羽院が和歌に特別な関心を向けた時期に始まり、院自らも歌の選定に関与しました。

編纂の進行

そのため、和歌所という組織が編纂を担い、多くの歌人が協力しました。選者には、源通具、六条有家、藤原定家、藤原家隆、飛鳥井雅経、寂蓮が定められましたが、寂蓮は選定作業の途中で亡くなり、実際には他の5人が主導的役割を果たしました。

建仁元年（1201年）に和歌所が設置され、選者たちは和歌を集め始め、元久元年（1204年）には形として整えられました。完成を祝う宴が催されたものの、仮名序の準備がされていなかったことから、批判も受けました。その後も改訂作業は続けられ、建保4年（1216年）までに最終的な完成が目指されました。

後鳥羽院は承久の乱により隠岐に流されてからも、当時の歌集に手を加え、自身にとっての正統な『新古今和歌集』を主張しました。

作品の構成

『新古今和歌集』は、20巻から成り立っており、「真名序」と「仮名序」の2つの序文が設けられています。歌の配列は四季ごとや恋の進行に基づき、古代と近世の歌人の作を交互に配置しています。歌の数は約1970首に及び、多くは短歌です。

特に西行の歌が多く収められており、偉大な歌人たちの作品も含まれています。

「新古今調」の特徴

「新古今調」では、唯美的かつ情緒的な表現があり、幻想的で象徴的なスタイルが特徴です。また、定家の影響を受けた「幽玄」が色濃く表れており、時代背景として、貴族社会の衰退とともに、自然への哀愁が感じられます。この頃題詠が活発に行われ、技巧的な表現が令和の歌に色を添え、古代の歌人たちとの結びつきを強調しています。

評価の変遷

近代に入り、評価は一変し、正岡子規は『新古今和歌集』を低く評価しました。しかし、北原白秋は新古今集を高く評価し、その和歌を象徴芸術と位置付けました。このように、作品は後世の詩歌に大きな影響を与え続けています。

伝本

『新古今和歌集』の伝本は多岐にわたり、四つの系統に分類されます。第一類は「竟宴本」、第二類はその改訂途中の本、第三類は最終的に完成した本文、第四類は後鳥羽院による手直しが加わった「隠岐本」とされています。 残された伝本は主に第二類に属し、一般に知られている本文もこの系統に含まれます。

『新古今和歌集』は、和歌の伝統を継承しつつも、新たな美しさを創出した重要な作品群として、今なお研究や評価され続けています。

もう一度検索