新語

『新語』の概要

『新語』（しんご）は、古代中国の前漢初期に活躍した陸賈によって著された重要な書籍です。紀元前200年頃に完成したこの著作は、漢の初代皇帝・劉邦の求めに応じて執筆されたもので、国家の興亡に関する考察を含む全12篇から成り立っています。ただし、これが実際に陸賈の著作であるかについては疑念があるという説も存在します。

著作の経緯と背景

劉邦は秦の滅亡後、自らが天下を治めるに至った歴史的な経緯を持っています。陸賈は劉邦の下で使者として多くの交渉に関与し、その後も詩経や書経を引用しながら劉邦の治世を支えました。一方、劉邦は儒者に対してあまり良い感情を持っておらず、当初は道徳や古典に対する関心が薄いと言われています。陸賈はこうした劉邦に対し、古代の聖王の道徳を引き合いに出しながら、理論的な正しさを説きました。劉邦は反省し、陸賈に対し、国の存亡についてさらに詳しく著すよう依頼した結果、『新語』が生まれました。

その成立時期は、劉邦が皇帝に即位した紀元前202年からその死去に至る紀元前195年の間にかけてであり、やや後期に偏っていたと考えられています。

歴史的意義

『新語』についての情報は、約100年後に編纂された司馬遷の『史記』によっても確認されます。司馬遷は、陸賈の表現力を高く評価し「当世の弁士である」と述べています。後の『漢書』には、陸賈の著作に関する情報が残されており、『新語』は直接的に取り上げられてはいませんが、関連する儒家の文献の中にその影響を認めることができます。特に宋代に至って、陸賈による『新語』はその内容が整理され、以降の時代にも多くの版が流通しました。

内容と思想

題名の意味

『新語』というタイトルは、陸賈が自らの著作を通じて新たな歴史の時代を切り開く意義を自負していることを示しています。この時代、賈誼の『新書』や劉向の『新序』など、新たな視点を持った作品が数多く登場しました。

歴史認識

本著の中で、特に重要な部分である道基篇では、宇宙の起源や社会の成り立ちが語られています。著者は「天が万物を生じ、地をもってこれを養い、聖人がこれを成す」と述べ、自然の秩序と人間が聖人によって教えられる過程を描写しています。この観点は、文明の進展を示す進歩的な視点を持っています。

倫理的側面と王道政治

『新語』は、仁義を重視した道徳的な王道政治を提唱し、暴力や策略による覇権や政権運営を否定しています。具体的には、秦の滅亡は暴力と刑罰に偏重した結果であり、これが国の衰退に繋がったという警告が繰り返し表現されています。技術や運営能力よりも道徳が重視されるべきであると説くことで、理想的な国家のあり方を模索しています。

道家思想との関係

道家の思想についても言及があり、『無為』という概念が複数回登場します。しかし、陸賈は最終的には儒家の道徳に帰着し、道家的な生き方には批判的な立場を取っています。『新語』内で用いられる道家用語は、儒教の政策を補強するために使われていると理解されます。

現存する『新語』の構成

『新語』は全部で12篇に分かれています。具体的には、道基、術事、輔政、無為、弁惑、慎微、資質、至徳、懐慮、本行、明誡、思務などが含まれています。それぞれは、陸賈の思想を反映した重要なテーマを持っています。熟考を促す内容として、多くの読み手に影響を与えてきた作品です。

参考文献

本著の理解を深めるために、多くの研究書や翻訳が存在します。特に陸賈の文献の歴史的背景や思想に関する研究は、他の古典文献と併せて行われています。

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