昇平丸

昇平丸の歴史と役割

昇平丸（しょうへいまる）は幕末に建造された特殊な洋式軍艦であり、歴史的な背景、設計、用途について探ってみましょう。この艦船は薩摩藩により造船され、後に江戸幕府へと献上され、昌平丸という新たな名を与えられました。その後、練習船として利用され、明治維新以降は開拓使の輸送船として重要な役割を果たしました。しかし、1870年に座礁して失われてしまいました。

船の建造と背景

昇平丸の建造は寛永12年（1635年）に遡ります。この時期、幕府は大名の水軍力を抑制するために、大型船舶の建造を禁止していました。しかし、19世紀に入ると西洋の艦船が日本沿岸に現れ、幕府はその動向に危機感を抱くようになります。そんな中、薩摩藩主の島津斉彬は、琉球王国の防衛を名目に洋式軍艦の建造を計画します。

琉大砲船としての起工

1853年に、琉球の防護を目的として建造の許可が下り、桜島瀬戸村での建材調達を経て、昇平丸の建造が開始されました。当初は琉球での建造が試みられましたが、外洋船の技術が不足していたため、薩摩での建造に変更されました。建造には琉球王府からの監督者も派遣されるなど、多くの人々が関与しました。

昇平丸は1854年に進水し、日本で2番目の洋式軍艦として竣工しました。初航海では当時の船長である石原龍助のもと、江戸へ向かいました。この航海では大砲の試射なども行い、国内における洋式軍艦としての役割を確立しました。さらに、琉大砲船の名目で幕府に献上された際には琉球からの使節が派遣され、国際的にも注目を集めました。

昇平丸の重要性

昇平丸は幕府献上後、海軍伝習生の乗船や長崎でのオランダ人指導による伝習に活用されました。その活動は日本の海軍の近代化に寄与し、さらに神奈川警衛に従事するなど、地方の防衛でも役割を果たしました。このように、昇平丸はただの軍艦ではなく、日本の近代海軍の礎を築いた重要な存在でした。

日の丸の象徴

また、昇平丸は日の丸を日本の船旗として掲揚した第一号ともされており、このことからもその歴史的重要性がうかがえます。1854年に締結された日米和親条約の影響で、日本国共通の船舶旗が求められた際、昇平丸が日の丸を掲げることとなりました。このことは、日本の海軍史においても重要な意義を持ちます。

明治維新後の運命

明治維新後は昇平丸が開拓使に引き渡され、輸送船としての任務を担っていましたが、1870年に航海中に嵐に遭遇し、座礁してしまう運命を辿ります。遭難地には慰霊碑が建てられ、今もその歴史を物語っています。昇平丸の物語は、近代日本の海軍力の発展といった側面からも多くの教訓を与えてくれるものです。

結語

昇平丸は、幕末から明治にかけての日本の海軍における多くの変革と革新の象徴です。その短い歴史の中にも多くの重要な出来事が詰まっており、今後もその意義を学び、後世に伝えていくことが重要です。

もう一度検索