春陽

春陽（しゅんよう）

春陽は、2001年に北陸農業試験場で開発されたイネの一品種です。この品種は、低グルテリンの特徴を持ち、旧系統名は「北陸183号」とされています。春陽は、「エルジーシー1」と「北陸153号」を交配して生まれました。その主な目的は、慢性腎不全患者の病態食に適した米を育成することでした。また、春陽は、消化に優れた低い水溶性タンパク質を含むため、淡麗な清酒を製造するのに適しています。

春陽という名称は、健康であり、春の訪れを楽しむ様子をイメージして付けられました。

栽培地域と特性

春陽は、主に宮城県から宮崎県にかけて広がる地域で栽培されており、その熟期は北陸地域においてやや遅く、早生の晩に分類されます。玄米の千粒重は驚くほど重い28gとされ、粒が大きいため、収穫効率は高まります。「ひとめぼれ」と比較すると、熟期は約5日遅れますが、全体の収量は優れています。ただし、玄米の外観品質はやや劣るという特性があります。

グルテリンの含有率は「エルジーシー1」とほぼ同程度ですが、一般的な品種の3分の1程度とされています。粒の大小から精白の際にグルテリンをさらに減少させることが可能ですが、玄米自体が柔らかいため、精米には注意が必要です。食味については、「エルジーシー1」に劣るものの、「ホウネンワセ」と同じくらいで、通常の品種と比べると同等かやや劣るという評価です。

このように、春陽は慢性的な腎不全を抱える患者の食事療法にも活用されることが多い品種です。これは、効果的なタンパク質摂取制限を提供するため、食事内容の調整が求められる状況において非常に有益です。

酒造用の特性

さらに、春陽の大粒で低タンパクの特性から、酒造用米としての利用にも適しています。特に、麹米としての利用が推奨されており、アミノ酸が少なく、このことにより雑味の少ない清酒を生産することが可能です。新潟県柏崎市に位置する原酒造株式会社では、春陽を原料にした「初摘み春陽」という商品も展開されています。

まとめ

春陽は、腎不全患者向けの食事療法に最適な特性を持ったイネの品種で、その栽培地域や酒造用の用途においても高い評価を受けています。大粒で低タンパク質の特性を生かし、さらなる利用方法が期待される春陽は、今後とも注目されるべき存在であると言えるでしょう。スクブ米としての利用価値も持つため、様々な分野での可能性が広がっています。

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