慢性腎不全

慢性腎不全：ゆっくりと進行する腎臓病

慢性腎不全は、腎臓の機能が慢性的に低下する病気です。腎臓は、血液をろ過して老廃物を尿として排出する重要な役割を担っています。慢性腎不全では、糸球体や尿細管といった腎臓の組織が損傷し、ろ過機能が低下するため、体内に老廃物が蓄積していきます。

症状と進行

慢性腎不全は、初期段階では自覚症状がほとんどありません。そのため、気づかずに病気が進行することが多く、数カ月から数十年かけて腎機能が徐々に低下していきます。症状が現れる頃には、すでに相当程度進行しているケースも少なくありません。

病期は、腎予備能減少期、代償性腎不全期、腎不全期、尿毒症期の4期に分けられます。

腎予備能減少期: 腎臓の機能は低下し始めていますが、身体はそれを補うため、自覚症状はほとんどありません。
代償性腎不全期: 腎機能の低下により、尿の濃縮機能の低下、軽度の貧血、高窒素血症などが現れます。
腎不全期: 腎機能が著しく低下し、高窒素血症、代謝性アシドーシス、電解質異常などが起こります。症状は次第に悪化していきます。
尿毒症期: 腎機能がほぼ完全に失われ、様々な症状（尿毒症症状）が現れ、生命に危険が及ぶ状態です。この段階では、人工透析などの治療が不可欠となります。

原因

慢性腎不全の原因は多岐に渡りますが、最も多いのは糖尿病性腎症と慢性糸球体腎炎です。その他、悪性腎硬化症、多発性嚢胞腎なども原因となります。透析導入に至る症例では、糖尿病性腎症が最も多く、次いで慢性糸球体腎炎が続きます。

臨床症状

慢性腎不全が進行すると、様々な症状が現れます。代表的なものとして、腎性貧血、高リン酸血症、低カルシウム血症、浮腫、尿毒症などがあります。尿毒症は、体内に老廃物が蓄積することで起こるもので、呼吸困難、倦怠感、吐き気、意識障害など、様々な症状を引き起こします。

腎性貧血: 腎臓で生成されるエリスロポエチンというホルモンの不足により起こる貧血です。
高リン酸血症・低カルシウム血症: リンの代謝異常により、リン酸値が上昇し、カルシウム値が低下します。
浮腫: 体内の水分が蓄積することで起こるむくみです。
尿毒症: 老廃物が体内に蓄積することで起こる様々な症状の総称です。呼吸困難、倦怠感、吐き気、意識障害など、様々な症状が現れます。線維性骨炎を引き起こすこともあります。

検査

慢性腎不全の診断には、血液検査、尿検査、画像検査などが行われます。血液検査では、クレアチニン値、尿素窒素値、電解質などの数値を調べ、腎機能の状態を評価します。画像検査では、腎臓の構造異常がないかを調べます。

治療

慢性腎不全の治療は、病状の程度によって異なります。初期段階では、食事療法、生活習慣改善、薬物療法などが行われます。食事療法では、蛋白質、リン、カリウムの摂取量を制限し、水分摂取量を調整します。薬物療法では、高血圧や貧血などを改善するための薬剤が使用されます。

病状が進行し、腎機能が著しく低下した場合には、人工透析や腎移植などの治療が必要になります。人工透析は、血液を体外でろ過して老廃物を除去する治療法で、腎臓の機能を人工的に代替します。腎移植は、健康な腎臓を移植することで、腎機能を回復させる治療法です。

予防

慢性腎不全の予防には、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防が重要です。健康的な食生活、適度な運動、禁煙などを心がけることで、慢性腎不全のリスクを低減することができます。また、定期的な健康診断を受けることで、早期発見・早期治療につなげることが大切です。

まとめ

慢性腎不全は、早期発見が難しく、気づかないうちに進行することが多い病気です。しかし、適切な治療を行うことで、病状の進行を遅らせ、生活の質を維持することができます。定期的な健康診断や、生活習慣病の予防に努めることが、慢性腎不全予防の第一歩となります。

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