暖簾

暖簾（のれん）の概要と歴史

暖簾は、商店や部屋の入り口に吊るされ、日よけや目隠しの役割を果たす布のことを指します。主に営業中の表示としても重要で、屋号や商号、家紋が染め抜かれていることが多いです。暖簾は、奇数枚の布を上部で縫い合わせて作られ、下部は自然に垂れ下がった状態になっています。上端には「乳」と呼ばれる輪状の布をつけて竹竿に通し、出入口に掛けられます。

暖簾の役割と意味

古代から、暖簾は風や光を室内に直接入らないように防ぎ、また外からの視線を遮るために使われていました。この実用的な役割から次第に、商業的な目印として認識され、開店時に掲げ、閉店時には片付けることで営業の終わりを示すようになっていきました。このことから、屋号を「暖簾名」と呼ぶようになり、商店の信頼性や格式を象徴するものとなりました。

特に、戦前から戦後にかけての屋台や飲食店では、客が料理を食べた後に暖簾で手を拭く光景がありました。この暖簾が汚れている店は繁盛している証として認識されていました。また、温泉や銭湯では「湯のれん」と呼ばれる暖簾が使われ、男女や区分を示すために「女湯」「男湯」といった暖簾が掲げられることもあります。

暖簾には聖なる領域と俗なる領域を結ぶ象徴的な意味も込められており、料理店の調理場には「玉暖簾」が用いられることもあります。

暖簾の歴史

日本の伝統的な住居では、日光や雨を防ぐために、初めは筵（むしろ）が用いられていました。古語では暖簾を「たれむし」と称しており、古代からの使い方に関する記録があります。現存する最古の暖簾に関する資料は、保延年間の『信貴山縁起絵巻』に見られ、典雅でありながら現代の三垂れの半暖簾に類似したものが描かれています。

また、治承年間の資料にも、民家の廊下にかけられた藍染の暖簾が記録されています。暖簾という言葉自体は、中国語の「ノウレン」が由来で、禅寺の簾に布を掛けたものが転訛したものです。

暖簾の種類

暖簾は大きく分けて「長暖簾」と「半暖簾」の２種類に分類され、長暖簾は一般的に113 cmを基準にそれ以上の長さを持ち、半暖簾はその短いものを指します。また、間口全体を覆うような幅広の暖簾を「水引暖簾」と呼びます。

• - 長暖簾: 店内の商品が光で傷むのを防ぎ、客が商品選びに集中できるようにするために用いられます。
• - 半暖簾: 客に店内の作業や商品を見せる目的でよく使用され、うどん屋や寿司屋などに多く見られます。
• - 水引暖簾: 軒先に掲げられ、筵張りや板張りの木枠に布を使用しています。

また、特殊な暖簾には「日除け暖簾」や「縄暖簾」、さらにはビーズや木製の珠を使った「珠暖簾」、管状の具を使用した「管暖簾」などがあります。

暖簾の派生的な意味と用法

暖簾には商業上の意味合いもあり、不祥事が発生した際には「暖簾に傷がつく」と表現され、廃業する際には「暖簾をたたむ」といいます。また、同じ屋号を持つ店舗を出すことを「暖簾分け」と称します。

会計学では、企業買収時における投資額と純資産との間の差額を「のれん」と呼び、無形固定資産として扱われます。法学の文脈でも、「暖簾」は無形固定資産の一種として認識されており、商法典においてその文字が明記されていました。

現代においても、暖簾は商店やサービスにおける重要な象徴となっており、その存在は日本の文化に深く根付いています。

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