月面基地

月面基地とは

月面基地（げつめんきち、moon base、またはlunar base）とは、地球の衛星である月の表面に建設される、人間が居住できる恒久的な施設のことを指します。この概念は、科学技術の発展とともに、宇宙開発の一環として注目を集めてきました。月面着陸を成功させたアポロ計画以降、月面基地の建設は現実味を帯び、各国の宇宙機関による計画が進められていますが、長い間その実現は難航していました。しかし、2000年代に入り再び多くの国が月面基地の建設に向けた具体的な計画を提案しています。特に、2010年代から2020年代にかけて、中国やロシア、アメリカの各国が活発な動きを見せています。

各国の月面基地計画

2021年の時点で、各国の宇宙機関や企業が提案している月面基地の計画には、以下のようなものが含まれています。

ILRS (International Lunar Research Station)

ILRSは、中国とロシアが共同で建設を進めることが決まった月面基地です。この計画では、月の地質や化学、宇宙環境、天文学、生物医学、水や鉱物資源の研究が行われる予定です。また、欧州宇宙機関やタイ、アラブ首長国連邦、サウジアラビアなども参加する見込みです。

• - 第一段階 (2021~2025年): 月の南極付近での基地建設に向け、打ち上げが計画されている嫦娥6号、嫦娥7号、ルナ25号などのロケットから得られるデータを基に、基地の設置場所を選定します。
• - 第二段階 (2026~2030年): 嫦娥8号とルナ28号による建設地の初期設定と、基盤の構築が進む予定です。
• - 第三段階 (2030~2035年): 中国の長征9号ロケットが試験打ち上げを行い、実用化を目指します。
• - 第四段階 (2036年~2045年): 人類の長期滞在が実現する見込みです。

アメリカのアルテミス計画

アメリカ航空宇宙局（NASA）も月面基地の建設を目指し、2006年に計画を発表しました。当初は2020年までの建設開始を目指しましたが、後の中止を経て、2019年には新たに「アルテミス計画」が発表されました。この計画は月面基地建設や有人火星探査を視野に入れたもので、2024年を目指す有人月面着陸が含まれています。

日本の月面基地計画

日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）も2006年に有人探査を目指す月面基地構想を打ち出しました。定員は2〜3人で、居住棟や発電システム、研究施設などを備えた基地が想定されていますが、具体的な進展はなされていない状況です。

その他の国の計画

インド宇宙研究機関など、他の国々も月面基地の構想を進めています。

月面基地の構造

月面基地の具体的なデザインには、さまざまなアプローチが提案されています。以下にその代表的な構造を挙げます。

• - 円筒型モジュール構造: 宇宙ステーションのモジュールのように円筒型の部屋をつなぎ合わせる方法。
• - インフレータブル構造: 空気圧で膨らませるドーム型の構造で、輸送コストを抑えつつ、大きな空間を作り出せます。
• - 月の土によるコンクリート構造: 月の土を使ったコンクリートを利用し、水以外の材料は月で調達可能です。
• - 地下溶岩洞の利用: 月の地下には、自然の溜まり場である溶岩洞も存在するため、これを利用する構想もあります。

また、月の表面は放射線が強いため、居住空間の構造設計は放射線遮蔽も考慮する必要があります。ISSと比べて約2.6倍の放射線量に晒されるため、長期滞在を行うための地下施設などが今後求められます。

建設の意義と未来

月面基地の存在は、有人探査をより実現可能にし、将来的には他の惑星への探査活動にも資することが期待されています。また、基地の建設が進めば、月資源の採掘や人類移住の等、我々のエネルギー問題に貢献する可能性も広がります。月の重力は地球の約6分の1であり、無重力環境とは異なる実験が可能であり、新たな発見の場ともなり得るのです。

過去のキャンセル計画

ソビエト連邦では、1962年から1974年にかけて「ズヴェズダ月面基地」という有人月面基地の設計が行われていましたが、最終的には計画がキャンセルされてしまいました。

このように、月面基地は各国の研究・探査の重要な拠点となると共に、将来的には人類の新たなフロンティアを開く鍵になることが期待されています。

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