有効射程

有効射程

有効射程とは、目標を照準して命中させ、射撃の効果を発揮できる最大の距離のことです。英語ではEffective Rangeと呼ばれます。火砲においては、砲兵部隊が目標に対し効果を得るために行う効力射の最大距離を指します。銃砲類、ロケット弾、弾道ミサイル、魚雷などの兵器の性能を示す指標の一つであり、実用上その威力が有効となる目安となる距離です。有効射距離、有効射程距離と表記されることもあります。

有効射程圏外では、試射後の修正射撃を繰り返しても、目標に直接危害を加える効力射を得ることが困難になります。砲撃においては、土煙や水柱が目標の手前と遠方を均等に捉える挟叉が効力射とされます。

ただし、発射前や飛翔中に方向や速度を変化させる要素は多く、運用環境や測定条件によっても変化するため、有効射程の定義は国や運用形態によって異なります。

無誘導兵器

発射後に弾道が放物線を描く銃砲では、最大投射距離と集弾性能が主な要素となり、弾種によって変化します。射手や砲手の技量も影響します。無誘導兵器は、投射距離の手前で飛翔経路がばらつくため、最大投射距離は有効射程よりも長くなります。

小火器

アメリカ軍の小銃では、高さ約50cm、幅約70cmの伏せた歩兵の正面面積に対し、約1/2の命中率が得られる距離を有効射程とします。この際、自動小銃や機関銃は全自動で発射されます。

火砲

大砲などの火砲は、現在でもほとんどが無誘導の砲弾を使用しています。有効射程は、弾幕散布密度、発射弾数、砲弾の種類と発射薬の使用量、砲弾の飛翔距離、飛翔時間とコリオリの力、炸薬の威力範囲、砲身の磨耗度合い、砲身の温度、砲身の歪み、砲座の地盤の硬さ、天候、砲弾の飛翔高度に応じた風向風速、気圧、気温湿度、発射位置と目標の高度差、地図の図法と測量の精度、友軍からの情報伝達速度と予測精度、標的の硬軟、大小、密集度、移動速度、射線の修正速度、砲弾の装填速度など、多岐にわたる要素によって左右されます。また、弾着観測所の配置状況によっても有効射程は変化します。

徹甲弾（AP弾）: 上記の要素に加え、侵徹長が重要な要素となります。弾着点の材質によって侵徹長は異なります。
榴弾（HE弾）: 上記の要素に加え、榴弾の威力範囲が重要な要素となります。目標の種類によって威力範囲は異なります。

誘導兵器

誘導兵器では、最大飛翔距離（または航走距離）と誘導精度が主な要素となり、発射母機の性能も影響する場合があります。誘導精度が高ければ、飛翔距離（または航走距離）がそのまま有効射程となり、最大飛翔距離（または航走距離）は有効射程以上となります。

ミサイル

ミサイル自身の飛翔能力と目標捕捉能力によって有効射程が算出されます。システム全体では、外部レーダーなどの誘導能力も要素となります。弾道ミサイルでは、CEP（半数必中界）が得られる飛距離が有効射程と考えられています。ミサイルの能力は機密保持のため、公表されることは多くありません。ミサイルは発射直後に推進剤の燃焼によって加速されますが、燃焼後は滑空するため機動力が低下し、機動を行うと射程も著しく減少します。ミサイルに対する回避機動は、単に急旋回するだけではありません。

魚雷

第二次世界大戦時の無誘導直進魚雷では、有効射程は概ね3,000～4,000mとされました。これは、駆逐艦や潜水艦が一度に複数の魚雷を扇状に発射し、船体長100～200m程度の艦腹を直撃する精度の限界とされた距離です。21世紀現在では、航走距離とホーミング魚雷の追尾用ソナーの捕捉能力が主な要素となります。現代戦においても、潜水艦の魚雷の有効射程は、目標を潜望鏡で視認できる10海里程度とされています。

利用

有効射程の数値は、オペレーションズ・リサーチに反映され、より効果的な戦術や後方支援活動を策定するためのフィードバックデータとして活用されます。

関連項目

弾道
弾道学
正確度と精度
砲口初速
オペレーションズ・リサーチ
ストッピングパワー

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