有吉道夫

有吉道夫九段：55年の将棋人生と「火の玉流」の軌跡

1935年生まれの有吉道夫氏は、2022年9月27日に87歳で他界されました。岡山県出身の彼は、15歳で大山康晴十五世名人に師事し、19歳でプロ棋士としてデビュー。その後、55年に渡る棋士人生において、数々の偉業を達成しました。本稿では、彼の華麗なる棋士人生を振り返ります。

大山門下、そしてプロへの道

幼い頃から将棋に親しみ、「矢倉囲いの美しさ」に魅せられた有吉氏。大山門下で内弟子生活を送る中で研鑽を積み、1955年、四段としてプロ入りを果たします。

彼の昇段は順調そのものでした。順位戦では、C級2組からC級1組、B級2組へと、2年連続で昇級。1957年には王将リーグに初参戦し、その後も着実に実力をつけ、1965年にはA級八段に昇段します。

タイトル戦への挑戦とライバルたち

有吉氏の棋風は「火の玉流」と呼ばれ、堅実な守りを築いた後、激しい攻撃で相手を圧倒するスタイルでした。その持ち味を活かし、数々のタイトル戦に挑戦。1966年には師匠・大山とのタイトル戦（王位戦）に初挑戦しましたが、惜しくも敗退。その後も王位戦、王将戦、棋聖戦など、複数のタイトル戦に挑戦します。

ライバルとして常に意識していたのは、同じ関西本部の内藤國雄九段でした。互いに切磋琢磨し、関西将棋界を長年牽引した両雄は、将棋史に名を刻む存在です。

棋聖獲得と1000勝の偉業

1972年度後期、37歳という当時高齢記録で棋聖位を獲得。師弟ともにタイトルを獲得したのは史上初であり、同時期に師弟がタイトル保持者であった唯一の例となりました。このタイトル獲得は、彼の棋士人生における唯一のタイトルとなりますが、彼の努力と才能を象徴する大きな成果です。

さらに、2001年には史上6人目の通算1000勝を達成。特別将棋栄誉賞を受賞し、その偉業は長く語り継がれるでしょう。

晩年の戦い、そして引退

年齢を重ねても、有吉氏の将棋への情熱は衰えることはありませんでした。71歳で順位戦最年長勝ち越しを記録するなど、驚異的な粘りを見せますが、2009年度には引退を決意。74歳で出場したNHK杯本戦は、史上最高齢記録となりました。

彼の引退は、将棋界に大きな衝撃を与えました。しかし、彼の55年間の棋士人生は、後進に多大な影響を与え続け、将棋史に永遠に刻まれるものとなるでしょう。

棋風と人物像

有吉氏の棋風は、堅実な守りから繰り出す鋭い攻撃が特徴でした。▲4六銀から始まる矢倉戦の戦法は「有吉流」として知られています。また、対振り飛車では玉頭位取り戦法を好んで用いていました。

棋士としてはもちろん、日本将棋連盟常務理事や倉敷市大山名人記念館館長を務めるなど、将棋界の発展にも大きく貢献しました。日々の散歩を欠かさず、穏やかな人柄も周囲に慕われていました。

まとめ

有吉道夫九段は、55年間という長きに渡り第一線で活躍した稀代の棋士でした。大山康晴十五世名人との師弟関係、内藤國雄九段とのライバル関係、そして「火の玉流」と呼ばれる独自の棋風は、多くの棋士たちに影響を与えました。1000勝という偉業、そして晩年まで衰えぬ将棋への情熱は、これからも多くの将棋ファンに感動と勇気を与え続けるでしょう。

もう一度検索