朝食会

朝食会：近衛内閣を影から支えた知の集会

近衛文麿内閣時代、ひそかに開催され、内閣の政策決定に大きな影響を与えたとされる「朝食会」。その実態は、内閣総理大臣秘書官であった牛場友彦と岸道三を中心に組織された、いわば政治的な勉強会でした。朝食を共にしながら活発な議論が交わされたことから、この名が付けられました。別名「朝飯会」とも呼ばれていました。

参加メンバー：多様な顔ぶれ

朝食会は、牛場と岸によって、政治、経済に精通した幅広い人材が選ばれました。学者、ジャーナリスト、評論家など、多様なバックグラウンドを持つメンバーが参加していました。その中には、内閣書記官長の風見章や、後に近衛新体制運動の中心人物となる佐々弘雄、白洲次郎、細川嘉六、平貞蔵、松方三郎、松本重治、笠信太郎、蠟山政道、そして牛場友彦自身も含まれていました。

特筆すべきは、のちにゾルゲ事件に関与した人物も参加していた点です。尾崎秀実、西園寺公一、犬養健などがその例です。彼らは、朝食会において貴重な情報や独自の視点をもたらしたと考えられます。

会合の経緯と開催場所

当初は夕食会として始まった朝食会ですが、参加者の都合を考慮し、朝8時頃に開催されるようになりました。これは、尾崎秀実が内閣嘱託となったことがきっかけと言われています。

開催場所は、牛場邸、万平ホテル、西園寺公爵邸、そして首相官邸など、場所を変えながら数十回に及ぶ会合が開かれました。特に西園寺公爵邸では、1939年4月から1940年11月頃まで、頻繁に会合が開かれたとされています。

情報と影響力：近衛内閣への貢献

朝食会における議論は、近衛内閣の政策決定に大きな影響を与えたと考えられます。特に、尾崎秀実はアジア、ロシア、欧米の国際情勢に関する情報を提供することで、近衛内閣の南進政策に重要な役割を果たしたとされています。

昭和研究会との関係

朝食会の参加メンバーには、昭和研究会の中心人物も含まれており、両者には密接な関係があったと考えられています。昭和研究会は、近衛新体制運動を推進する上で重要な役割を担っており、朝食会もその一環として位置付けることができます。

まとめ：謎多き朝食会の実像

朝食会は、近衛文麿内閣の政策決定過程において、重要な役割を果たした非公式な政治集団でした。多様な人材が参加し、活発な議論が交わされたこの会合は、その存在が明らかになった現在でも、多くの謎と議論を呼び起こしています。その詳細な活動内容や、近衛内閣への影響の度合いについては、今後の研究が待たれます。しかし、朝食会が当時の政治状況を理解する上で、重要な鍵となることは間違いありません。

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