本庄季郎

本庄 季郎（ほんじょう きろう）

（1901年8月6日 - 1990年4月21日）日本の著名な航空技術者。

昭和期における日本の航空機開発を牽引した人物の一人であり、特に三菱重工業の前身である三菱内燃機製造に所属し、第二次世界大戦中に運用された数多くの航空機の設計に深く携わりました。その代表的なものとして、「一式陸上攻撃機」のような主力機が挙げられます。彼は、当時の最先端技術を結集したこれらの航空機の開発において、重要な役割を果たしました。

終戦後、日本の航空機産業は連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）による厳しい制限下に置かれ、航空機の開発や製造が事実上不可能となりました。このような状況下で、三菱はそれまでに蓄積した高度な航空技術を民生品に転用する道を探ります。本庄氏もまた、この技術転換に貢献しました。彼が設計を手掛けた製品の一つに、航空機製造の精密な技術を活かして作られた高性能自転車「三菱十字号」があります。この自転車は、その堅牢性と洗練された設計で注目を集めました。

さらに、本庄氏の設計技術は、戦後日本の新たな挑戦の場でも活かされました。昭和52年（1977年）に初めて開催された讀賣テレビ主催の「鳥人間コンテスト選手権大会」において、初代優勝を果たした岡良樹氏が操縦したハンググライダーも、本庄氏が設計した機体でした。これは、航空機という巨大な機械から、人力で空を飛ぶための軽量な機体まで、彼の設計思想と技術が幅広く応用可能であったことを示しています。人力飛行という夢の実現に、航空技術者が貢献した象徴的な出来事と言えるでしょう。

晩年は穏やかに過ごし、平成2年（1990年）4月21日、前立腺癌のため88歳でこの世を去りました。

近年、本庄季郎という人物は、平成25年（2013年）に公開され、広く知られることとなったスタジオジブリ制作のアニメーション映画『風立ちぬ』に登場するキャラクターのモデルの一人として、再び脚光を浴びました。この映画では、主人公である航空技術者・堀越二郎の良き友人であり、三菱における同僚として描かれました（劇中での声優は西島秀俊氏）。ただし、映画の中では堀越氏と同期のように描かれていますが、史実においては、本庄氏の方が東京帝国大学（現在の東京大学）工学部航空学科を一年早く卒業しており、厳密には堀越氏の先輩にあたります。この映画を通じて、本庄氏の存在や、彼が生きた激動の時代における技術者たちの情熱が、多くの人々に伝えられることとなりました。

航空機設計から、自転車、そして人力飛行機まで、本庄季郎は多岐にわたる分野でその卓越した技術と知見を発揮した、日本の技術史に名を刻む人物です。

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