松下禅尼

松下禅尼（まつしたぜんに）は、鎌倉時代中期に生きた女性です。生没年ははっきりとはわかっていませんが、鎌倉幕府の有力御家人であった安達景盛の娘として生まれました。彼女は、北条時氏の正室となり、後に鎌倉幕府の重鎮となる北条経時と北条時頼の二人の執権を育て上げたことで、歴史に名を残しています。

松下禅尼は、元仁元年（1224年）に夫である時氏が六波羅探題として京都に赴任するのに同行し、上洛しました。その後、鎌倉に戻り、寛喜2年（1230年）に時氏が亡くなると、出家して実家である甘縄邸に移り住みました。

彼女の質素倹約を重んじる姿勢を示す有名な逸話が『徒然草』の184段に記されています。その逸話によると、松下禅尼は、障子の破れた箇所を自ら切り貼りして修理する様子を時頼に見せ、贅沢を戒め、倹約の大切さを教えたとされています。この話は、昭和期の国語教科書にも掲載され、広く知られることとなりました。

夫の早世後、松下禅尼は、息子である経時と時頼の養育に尽力しました。また、第8代執権となる北条時宗は、松下禅尼が住んでいた甘縄の邸で誕生しています。彼女の献身的な子育ては、後の鎌倉幕府の運営に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

没年は不明ですが、弘安5年（1282年）10月以前には亡くなっていることがわかっています。

松下禅尼は、その生涯を通じて、質素倹約を実践し、子供たちの教育に情熱を注ぎました。彼女の生き方は、現代においても学ぶべき点が多く、多くの人々に影響を与え続けています。

関連作品

彼女を題材とした作品も存在します。

映画
『国難』（1920年） - 三木淳が演じました。
『禅 ZEN』（2009年） - 今本洋子が演じました。
テレビドラマ
『北条時宗』（2001年） - 富司純子が演じました。

参考文献

高橋慎一朗『北条時頼』吉川弘文館〈人物叢書〉、2013年。

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