松旭斎すみえ

松旭斎すみえ：日本の奇術界を彩った伝説のマジシャン

1938年1月1日生まれの松旭斎すみえは、日本を代表する女性奇術師として、長きに渡り人々を魅了しました。2023年8月12日、85歳でその生涯を閉じました。彼女の人生は、幼少期の困難から始まり、類まれな才能と努力によって築き上げられた輝かしい成功物語でした。

不遇の幼少期と奇術との出会い

神奈川県横浜市で生まれたすみえは、幼少期から苦労の絶えない日々を送りました。12歳の時に里子に出された彼女は、里親が奇術師の松旭斎小天菊であったことから、奇術の世界に触れることになります。見よう見まねで始めた奇術でしたが、その才能はすぐに開花し、本格的に修行を始め、「松旭斎すみえ」として奇術界の道を歩み始めることとなります。

新しいスタイルの確立と人気獲得

20歳の時、彼女は「サン・パイン・シスターズ」を結成し、「デュエット奇術」という新しいスタイルを発表しました。軽快なトークと、これまでとは一線を画す華麗なマジックは、たちまち人気を博し、すみえは奇術界のトップマジシャンへと上り詰めます。その人気は、奇術の枠を超え、数々のテレビ番組への出演にも繋がりました。

音楽とマジックの融合

特筆すべきは、ポール・モーリアの楽曲「オリーブの首飾り」を手品のBGMとして初めて使用したことでしょう。従来の「見せるだけ」のマジックに、軽妙なトークと音楽を融合させた彼女のスタイルは、奇術界に新たな風を吹き込み、現代のマジックスタイルに大きな影響を与えました。

後進の育成と奇術界への貢献

日本奇術協会の8代目会長、そして名誉会長を務めたすみえは、後進の育成にも尽力しました。彼女の弟子たちは、「松旭斎」ではなく「花島」を名乗っています。これは、一番弟子の花島皆子が、彼女の叔父の芸名である「花島」を名乗ったことをきっかけに始まりました。すみえは、「松旭斎」という格式高い名前よりも、「花島」のほうが現代的で、特に女性マジシャンには相応しいと考えていたようです。

多くの賞と功績

長年の功績が認められ、すみえは数々の賞を受賞しました。その中には、放送演芸奇術部門賞、文化庁芸術祭優秀賞、芸団協芸能功労者表彰など、輝かしい受賞歴が並びます。

著作とテレビ出演

奇術の技術を伝えるため、彼女は『初めてでもすぐできるやさしい手品・奇術入門』、『松旭斎すみえのマジックの世界』などの著書も出版しました。また、フジテレビの『ライオンのいただきます』、『一枚の写真』、TBSの『キイハンター100話』など、多くのテレビ番組に出演し、幅広い世代にマジックの魅力を伝えました。

偉大なマジシャンの遺産

松旭斎すみえの死は、日本の奇術界に大きな損失をもたらしました。しかし、彼女が残した功績と、後進へと受け継がれた技術は、これからも多くの人々を魅了し続けるでしょう。彼女の人生は、困難を乗り越えて夢を実現した、まさに奇跡の物語でした。その功績は、日本のマジック史に永遠に刻まれることでしょう。彼女の軽妙なトークと卓越したマジックは、多くの人々の記憶の中に生き続けることでしょう。

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