枡

枡（ます）についての概要

枡は、体積を測定するために使用される器具で、日本の伝統的な単位である「合」、「升」、「斗」を計測するために特に用いられています。また、枡は計量目的だけでなく、祝宴で使われる「酒枡」や、節分で豆を入れる「節分枡」といった用途でも見られますが、この記事では主に計量用の枡に焦点を当てて解説します。

枡の歴史

枡の起源は古代にまで遡りますが、中世の混乱期には規格がばらばらになりました。当時の領主たちは年貢を多く徴収するために、異なる種類の枡を用意していたことが知られています。特に「返抄枡」（年貢徴収用）と「下行枡」（支払用）の二種類が存在し、これらは実際の容量に差があり、下行枡の方が少量に設定されることが一般的でした。例えば、高野山のある荘園では、1斗の米を返抄枡から下行枡に移し替えると、そのサイズが実質的に小さくなるため、実際には同じ量にもかかわらず「1斗7升」とされていました。このような不正は当時、しばしば行われていたのです。

織田信長は、京都で通用していた十合枡を正式なものとして定め、豊臣政権もこの枡を受け継ぎました。その後、江戸幕府において1669年に新たな統一規格が制定され、これが今日まで続く枡の基礎となります。しかし地域によっては規格外の枡が使用されることが多々あったため、完全な統一は難しい状況でした。江戸時代中期になると、不正が厳しく取り締まられ、違反者には厳しい罰が科せられるようになりました。

大正時代になると、依然として枡に対する不正が見られ、1915年には東京市で一斉摘発が行われ、多くの不正者が検挙されました。なお、「升」などの体積単位は、枡から逆算されたものであり、「一升枡」という器具によって「一升」と呼ばれる体積が決められました。このため、枡の仕様が正確であるかどうかが計量の正確性に直結しており、偽の枡を製造して販売することは重罪とされました。

枡の種類

枡は主に、「穀用」と「液用」に分類されます。

穀用

穀用の枡には、1合、2合5勺、5合、1升、5升、7升、1斗などがあります。5合以上の枡には、計量時に盛り上がった部分を平らにするための基準として、弦鉄という細い棒が取り付けられた「弦掛け枡」が使用されます。これは正確な計量を確保するための工夫です。1884年に明治政府により、これらの枡の深さが微妙に調整されました。

液用

液体を計量するための枡には、1合、2合5勺（この場合は一杯枡）、5合、1升の4種類があり、金具を使用しないため「生地枡」と呼ばれています。

現代の枡の規格

特に基準となる一斗枡は、約18.039リットルの容量を持ち、サイズは一尺五分（約31.82cm）四方、深さ五寸八分八厘（約17.82cm）です。一升枡は約1.804リットル、五合枡は約0.9リットルの容量です。これらの規格は長い歴史の中で定められてきましたが、地域による違いがしばしば見られたこともあり、規格統一には時間がかかったと言われています。

まとめ

枡は日本の文化や歴史と深い関わりを持つ計測器です。その多様な用途や長い歴史を通じて、枡は単なる計測器にとどまらず、様々な文化的背景を秘めています。

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