柚木沙弥郎

柚木沙弥郎：型染めから立体造形まで、多彩な創作活動で彩られた101年

柚木沙弥郎（ゆのき さみろう、1922年10月17日 - 2024年1月31日）は、日本の染色工芸家である。101年の生涯において、型染めを中心とした染色技法のみならず、版画、絵本、切り絵、立体造形など、多岐にわたる創作活動を展開したことで知られています。その作品世界は、民藝運動の理念と深く結びつき、日本の伝統美を現代的な視点で再解釈した独特の表現様式を確立しました。

巨匠たちの影響と民藝への貢献

柚木は、東京で洋画家の父のもとに生まれました。その家系は岡山県倉敷の旧家に遡り、祖父は南画家として活躍したという芸術的な環境の中で育ちました。東京帝国大学文学部美学・美術史科への入学を経て、第二次世界大戦中は学徒動員を経験します。戦後、岡山県にある大原美術館に勤務したことが、彼の創作人生を大きく変えました。初代館長から柳宗悦の著書を借り、民藝運動に触れた柚木は、芹沢銈介の型染め作品に感銘を受け、染色家を志すことを決意します。

芹沢銈介に師事し、静岡県での修行を経て、1948年に初作品となる「紅型風型染布」を発表。その後、女子美術大学工芸科専任講師に就任し、芹沢が主宰する染色家集団「萌木会」にも参加しました。個展やグループ展を積極的に開催し、国内外で高い評価を得るようになります。

柚木沙弥郎の作品は、型染めの伝統的な技法をベースにしながらも、独自の表現方法を追求しています。鮮やかな色彩と大胆な構図、そして繊細な模様は、見る者に強い印象を与えます。彼の作品には、自然への深い愛情や、日本の伝統文化への敬愛が感じられます。

教育者としての顔と晩年

1972年には女子美術大学教授に就任し、1987年から1991年にかけては学長を務めました。教育者として後進の育成にも尽力し、多くの才能を世に送り出しました。日本民藝館評議員も務め、民藝運動の発展にも貢献しました。

100歳を超えてもなお、創作活動を続け、精力的に作品を制作し続けました。晩年は、東京都渋谷区の病院でうっ血性心不全のため101歳で死去しました。

受賞歴と参考文献

柚木沙弥郎は、その長年の創作活動や教育活動に対し、数々の賞を受賞しています。主な受賞歴には、国画奨励賞、ブリュッセル万博銅賞、宮沢賢治賞、子どもの宇宙国際図書賞、JAPAN天心賞特別賞などがあります。

彼の作品や生涯についてより深く知りたい方は、『&Premium（アンド プレミアム）2024年12月号』や、『柚木沙弥郎との時間』、『柚木沙弥郎のことば』などの書籍を参照ください。

柚木沙弥郎は、型染めという伝統技法を現代に蘇らせ、独自の芸術世界を築き上げた稀有な存在でした。101年の生涯は、日本の美術史に大きな足跡を残しました。

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