椿駅

椿駅：静寂に佇む温泉の玄関口

和歌山県西牟婁郡白浜町椿にあるJR西日本紀勢本線（きのくに線）の椿駅は、椿温泉へのアクセス拠点として知られています。しかし、その立地は温泉街の中心部から離れた、静かでひっそりとした場所にあります。山間に囲まれた、落ち着いた雰囲気の駅舎が印象的です。

歴史を刻む駅舎

1935年3月、国鉄紀勢西線の紀伊富田駅から当駅までの開通に伴い、「紀伊椿駅」として開業しました。既に五能線に「椿駅」が存在したため、この名称になった経緯があります。その後、五能線の駅名変更を経て、1965年3月1日に現在の「椿駅」に改称されました。

開業以来、多くの歴史を刻んできた椿駅。国鉄時代には急行列車の停車駅であり、当駅を起終点とする急行列車も運行されていました。また、特急「くろしお」も停車していましたが、2015年3月ダイヤ改正により停車が取りやめられ、現在は普通列車のみの停車となっています。貨物や荷物扱いも廃止され、1985年には無人駅（簡易委託駅）となり、2003年には完全な無人駅となりました。しかし、2021年3月からはICOCAが利用可能になり、利便性も向上しています。

駅舎と周辺環境

駅舎は古風な木造瓦葺の建物で、内部には出札窓口の名残も残されています。駅舎の看板にはツバキの花の絵が描かれており、周辺にはツバキの木が植えられています。待合室には、JR東日本米坂線の羽前椿駅の写真が飾られているという、ユニークな特徴もあります。

駅周辺は手つかずの山林が広がり、静かな環境です。椿温泉は海岸線沿いに位置しているため、駅からは距離があり、徒歩でのアクセスは困難です。そのため、駅から温泉街までは送迎バスを利用する必要があります。かつては駅前に貸し自転車が設置されていましたが、現在は管理者の不在により利用できません。駅前に流れる朝来帰川沿いを進むと、椿の中心地である朝来帰の集落があり、さらに国道42号を進むと椿温泉の温泉街に到着します。

駅の構造と利用状況

椿駅は、単式ホーム1面1線と島式ホーム1面2線の、合計2面2線の構造で、列車の行き違いが可能です。かつては2面3線でしたが、現在は3番線が撤去され、保線車両の材料線となっています。ホーム間は跨線橋で連絡しており、1番のりばはやや幅が狭い設計です。

近年の1日平均乗車人員は、公開されているデータからは確認できませんが、無人駅であることから、利用客数はそれほど多くないものと推測されます。

隣の駅

紀伊日置駅
紀伊富田駅

椿駅は、静かな山間に佇む、歴史を感じさせる駅です。温泉街へのアクセスという役割に加え、その静けさや歴史的背景から、訪れる人々に独特の雰囲気を感じさせる場所となっています。

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