横山 宏(よこやま こう)
横山 宏(
1956年6月15日 - )は、福岡県
北九州市出身の
イラストレーター、モデラーです。
武蔵野美術大学日本画科を卒業後、SF小説の挿絵、映画や
ゲームのメカデザイン、CMデザイン、立体物など、幅広い分野で活躍しています。代表作は、1982年に発表された『SF3D』であり、後に『マシーネンクリーガー(S.F.3.Dオリジナル)』と改名されました。
概要
横山宏は、初期にはペン画と水彩を主体とした作風でしたが、近年ではMac上のソフトウェア「
Painter」を用いた重厚なタッチの作品が多く見られます。かつては
日本SF作家クラブの会員であり、「
日本SF大賞」のトロフィーや「
手塚治虫文化賞」の賞牌も手掛けています。独特の口癖として「~するとええよ」や「いいでしょ」があります。
作風
モデラー/
造形作家としても、オリジナリティ溢れる作品を数多く制作しています。彼の作品は、まるで実在するかのようなリアリティを持ち、その高い
塗装・
工作技術は長年の経験に裏打ちされています。模型の表現手段として、映画『サンダーバード』や『スター・ウォーズ』の撮影用
プロップと同様のパーツ・
コラージュ(ミキシングビルド)を多用し、市販の
プラモデルやスチロール製ケースなどを組み合わせて独自の作品を作り上げます。また、作品の多くが
卵型(もしくはそれに近い形)であるのは、「人間がものを見たときに一番安心するのが
卵型だから」というこだわりによるものです。
横山は曲面マニアとしても知られており、造形に使えそうな様々な曲面を持つプラパーツを普段から収集し、作品に活用しています。デザインの工程も独特で、ラフイラストやパーツから触発され、イラストを描きながら立体化の方法を考案し、実際に立体を製作します。その後、再度イラストを仕上げ、完成したイラストを見ながら立体作品を完成させるという、2Dと3Dを行き来するデザイン手法が、彼の魅力的な作品を生み出す秘密と言えるでしょう。アカデミックな美術知識を模型製作に応用したのも、横山が日本で初めてであり、従来の経験則のみに頼った模型製作とは一線を画しています。
マシーネンクリーガー
『マシーネンクリーガー』は、横山の代表作の一つであり、彼がデザインし、自ら造形したオリジナルSF兵器群を使ったフォトストーリーです。リアプロダクション撮影、
多重露光、
デジタル合成などの技法を駆使し、見る側の想像力を刺激する戦場写真を制作しました。この技法は模型界に新しい表現をもたらし、「ストーリーを感じさせる模型」という新たなジャンルを確立しました。雑誌連載時は戦場での兵士の視点から物語が語られ、書籍化される際に大きな歴史が語られるという形式が特徴です。そのため、「まず模型ありき」という作品性格が形成され、カルト的な人気を博しています。
雑誌主導の企画連載であり、テレビアニメなどのメディア展開がほとんどないにもかかわらず、20年以上熱狂的なファンに支えられ、20年以上前に生み出された
ロボットデザインが新規ファンを増やし続けています。そのファン層の厚さから、かつて横山に憧れた少年たちが成人後、自身の
ゲーム作品の
デザイナーとして横山を起用する例もあります。
横山は『SF3D』の企画当初から
ロボットデザイン、模型製作のほぼ全てを担当しています。海外にも熱狂的なファンが多く、NITTO版の
プラモデルキットは常に
プレミア価格で取引されています。また、
ワンダーフェスティバルでは数多くのディーラーが横山のオリジナルモデルを再現した
ガレージキットを販売し、人気ブースとなっています。最近では、横山がデザインしたものを、一般原型師でありながらファンであるスタッフが製作し、横山が監修するというスタイルも取られています。
人柄
作風だけでなく、親しみやすく明朗で豪快な人柄も、多くのファンを魅了する理由の一つです。包み隠しのないストレートな発言が多いですが、ユーモアやフォローを忘れない点も魅力となっています。自身の作品のファンを大切にすることでも有名で、
インターネット黎明期にはファンのホームページに未発表の作品をサプライズで送るなど、お茶目な一面もあります。また、高校時代から
サッカーを続けており、50歳を過ぎてからも現役で草
サッカーをプレイするなど、
体育会系の一面も持ち合わせています。
エピソード
映画『
ゴジラvsビオランテ』に登場するスーパーX2のデザインコンペに参加し採用されたほか、脚本の描写から膨らませたサンダーコントロールシステムや92式メーサー戦車などのデザインも行いました。しかし、メーサー戦車のデザイン使用料を巡るトラブルから、一時的にスタッフから外されることとなりました。その後、特技監督の
川北紘一に直談判し、クレジットに名前が掲載されることとなりました。この経験から、以後の仕事ではエージェントを介して交渉を行うようになったそうです。