Painter

Corel Painter（コーレルペインター）とは

Corel Painterは、Corel社が開発・販売しているペイントソフトです。絵画、イラストレーション、版画など、アナログの画材の表現と操作を可能な限り正確にシミュレートすることを目指して開発されました。ピクセルマップベースのデジタルアート・アプリケーションであり、macOSとWindowsに対応しています。また、Android用のCorel Painter MobileやiOS用のCorel Paint it! Nowも提供されています。

概要

1991年に最初のバージョンがFractal Design（現：MetaCreations）から発売されて以来、30年以上の歴史を誇るベストセラーソフトの一つです。

Wacom製ペンタブレットの機能を最大限に活用し、ブラシの方向、傾き、回転検知に対応しています。これにより、実在する様々な画材をコンピュータ上で再現したり、デジタルならではの機能やカスタマイズで独自の画材を作成したりすることが可能です。600を超えるブラシと高速な描画スピード、絵画に必要な豊富な機能を備えています。

カラーピッカーや画面上での混色機能、画面を回転させて描ける機能など、多くのペイントソフトの先駆的存在としても知られています。SketchBook Pro、ArtRage、Artweaver、openCanvas、SAIなど、多くのペイントソフトに影響を与えています。

以前はペンキ缶のようなパッケージで販売されており、缶切りで開封するというユニークなスタイルも特徴でした。現在は紙製のパッケージで販売されています。

グラフィックソフトの分野では、Adobe Photoshopと並び、2次元コンピュータグラフィックスを代表するソフトとして知られています。描画機能や自然な表現に優れるPainterと、編集・加工機能や印刷時のカラーマッチングに優れるPhotoshopという位置づけが定着しています。

歴史

1991年の発売当初は、アメリカのフラクタルデザイン社が開発・販売を行っていました。開発者のマーク・ジマーは、自身の絵画への情熱とプログラマーとしての高い技術力を活かし、Painterに数々の独創的なアイデアと高い表現力を与えました。

1997年、フラクタルデザイン社はMetaTools社と合併し、メタクリエーションズとなりました。その後、2000年にカナダのCorel社に売却され、現在もCorel社が所有しています。

MetaCreations時代には、Painterと並んで3DCGソフトのBryceも開発されていましたが、Corel社への売却時にBryceは手放されました。バージョン6まではマーク・ジマーが開発に携わっていましたが、Corel社への売却に伴い、開発チームは彼の手を離れました。

MetaCreationsでPainterやBryceを開発していた一部のメンバーは独立し、ArtRageを開発しています。

バージョンごとの歴史

初代からPainter 11までの歴史は、Corel公式が推奨する書籍『Secrets of Corel Painter Experts』に詳しくまとめられています。

Fractal Design Painter 1（初代）

1991年に発売されました。キャンバスのテクスチャを表現できるなど、その革新性は当時のコンピュータグラフィックス業界に大きな衝撃を与えました。当初はMacintosh専用ソフトでしたが、後にWindows版も発売されました。

Fractal Design Painter 2

1992年に発売され、Painterの代名詞ともいえる「水彩」が搭載されました。また、拡張版の「Painter/X2」では、後のレイヤーに相当する「フローター」機能が搭載されました。ピクセルベースのソフトウェアでレイヤー機能を搭載したのはPainterが初でした。

Fractal Design Painter 3

マルチメディア対応を謳い、動画ファイルをフレームスタック形式で開けるようになりました。また、ブラシで画像をばらまく「イメージホース」機能が搭載され、従来のナチュラルメディアを超える「スーパーメディア」という新しい表現を可能にしました。

Fractal Design Painter 4

インターネット対応バージョンとして、gif形式やjpeg形式に対応しました。また、ネット回線を通じて複数ユーザーが同時に描ける「NetPainter」機能も搭載されました。

Fractal Design Painter 5

ダイナミックプラグインが搭載され、「リキッドメタル」や「インパスト」などの特殊な効果を表現できるようになりました。

MetaCreations Painter 5.5

1998年に発売されました。

MetaCreations Painter 6

1999年に発売され、「フローター」が「レイヤー」に名称変更され、機能が強化されました。透明レイヤーを使って絵を描く画法が実用的になりました。また、未乾燥の絵具の上に色を重ね塗りする「ウェットペイント」画法を再現できるようになりました。

Corel Painter 7

2001年に発売され、Corel社買収後初のバージョンです。粘り気のある「リキッドインク」ブラシと、新たな「水彩」ブラシが搭載されました。ユーザー間では旧水彩と新水彩と呼び分けられています。

Corel Painter 8

2003年発売。Photoshopとの互換性が強化され、レイヤーマスク機能が実装されました。また、絵具を混色する「ミキサーパレット」が追加されました。旧水彩を再現するための「デジタル水彩」ブラシも搭載されました。

Corel Painter IX(9)

2004年発売。ミキサーパレットでの混色をそのまま塗れる「アーティストオイル」ブラシが搭載されました。質実剛健な機能で、ユーザーからの評価も高いバージョンです。また、不正終了時のデータ復旧機能が追加されました。

Corel Painter X(10)

2007年発売。自動ペインティング機能の強化や、本物の筆のような「リアルブリスルブラシ」が追加されました。黄金比を用いた構図ツールも搭載されています。

Corel Painter 11

2009年発売。「ドライメディアツール」が追加され、ブラシ総数が873種類になりました。自由変形ツールやカラーマネージメント機能も強化されました。

Corel Painter 12

2011年発売。Windows 7 64bit OSにネイティブ対応し、ブラシのマルチコア処理による高速化を実現しました。新ブラシとして「リアル水彩」と「リアルウェット油彩」が追加されました。

Corel Painter X3

2013年発売。ブラシのジッター設定が可能になり、遠近ガイド機能も搭載されました。複数のレイヤーを同時に変形できるようになりました。

Corel Painter 2015

2014年発売。物理学に基づいた「粒子ブラシ」が搭載され、ブラシ速度が高速化されました。同時にAndroid版のPainter Mobileが発表されました。

Corel Painter 2016

Windows 10に正式対応し、Win/Macともに64bit OSのみのサポートになりました。「ダイナミックスペックル」ブラシが搭載され、Photoshop用のブラシがインポートできるようになりました。

Corel Painter 2017

「テクスチャペインティング」機能が搭載され、3Dレンダリング画像をPainterのテクスチャとして利用できるようになりました。「描点ステンシル」や「インタラクティブグラデーションツール」も搭載されました。

Corel Painter 2018

「厚塗り」ブラシカテゴリが追加され、よりリアルな油彩表現が可能になりました。クローン機能が強化され、「2.5Dテクスチャペインティング」も実装されました。

Corel Painter 2019

UIが刷新され、ダークテーマが追加されました。パフォーマンスが向上し、ブラシの動作が高速化しました。

Corel Painter 2020

スタンプブラシのGPUアクセラレーションに対応しました。ブラシの動作がさらに高速化し、「カラーハーモニー」パネルも追加されました。

Corel Painter 2021

AIスタイルの導入や、厚塗り系ブラシの追加、Apple Sidecarへの対応など、新機能が多数追加されました。サブスクリプションでの購入も可能になりました。

Corel Painter 2022

スタンプブラシのカスタマイズ機能が強化され、ブラシライブラリの検索機能が改善されました。

Corel Painter 2023

2022年7月に発売されました。

低価格版

プロフェッショナル向けのPainterに対し、初心者向けに機能を限定し、安価に提供した様々なシリーズが発売されてきました。これらの製品を「廉価版」と呼びます。

現行製品

Painter Essentials（ペインター エッセンシャルズ）

販売終了

Painter Classic（ペインター クラシック）
Art School Dabbler (アート スクール ダーブラー) (後にArt Dabblerに改名)
Painter Sketch Pad（ペインター スケッチパッド）

Essentialsシリーズ

Painter Essentialsは、本家Painterの機能を厳選し、低価格で提供しているシリーズです。最新バージョンはCorel Painter Essentials 7です。

Classicシリーズ

Painter Classicは、Painter 5をベースにした廉価版です。レイヤー機能やブラシのカスタマイズ機能が削減されていますが、動作が軽く、フルバージョン版のブラシライブラリを読み込める点が特徴です。

ArtDabbler

初心者向けにインターフェースを再設計した廉価版です。レイヤー機能はないものの、油彩、インク、クレヨンなど様々な筆を使え、簡易アニメーションも作成できました。

Sketch Padシリーズ

Painter 11を元に作られた廉価版で、スケッチやスピードペイントに特化した仕様です。レイヤーの合成モードやドライメディアツールが搭載されています。

Android版

2014年にAndroid版が発表されました。AndroidタブレットでPainterのブラシを利用できます。無料版と有料版があり、有料版ではRIF形式での保存が可能です。

Corel Paint it! Now

写真を絵画風に加工するiOS用アプリとして、2010年にリリースされました。

ソフト間の連携

Painterの標準形式であるRIF形式に対応しているソフトは、Corel Paint Shop Pro、Corel PHOTO-PAINT、CorelDRAWなどがあります。普段はPSD形式でデータ連携を行うことが多いです。

関連書籍

いしかわこうじ『Happy Painter Life』2000年
大賀葉子『Painterペインティング!』 2005年
大賀葉子『Painterキャラクターデザインブック』 2002年
ジェレミーサットン『ペインター クリエイティブ・テクニック』1997年
寺田克也『ペインタボン』
Artist HAL_『Painterらくらく絵画教室』 2003年
吉井宏『ハンズオンPainter!』1998年
吉井宏『タブレット&Painter Classicで絵を描こう』
渡辺優『Painter3! 完全ガイド』1995年
高橋和希『ジャンプ流!DVD付分冊マンガ講座(8) 2016年 5/2号』

参照

コーレル株式会社
Painter製品紹介ページ
* Painter情報サイト

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