横穴式石室

横穴式石室：古代日本の墓制と東アジアとの繋がり

横穴式石室とは、古墳の横に穴を掘って造られた石積みの墓室です。羨道と呼ばれる通路を通じて玄室（棺を納める部屋）へと繋がっています。中国の漢代に発達した墓制様式を起源とし、日本列島では古墳時代後期に広く普及しました。本稿では、横穴式石室の構造、起源、日本列島への伝播、朝鮮半島との関連性、そして代表的な例などを詳細に解説します。

起源と伝播

横穴式石室のルーツは、中国漢代に塼（せん、レンガ）で造られた塼室墓にあります。前[[漢]]中期以降、中国全土に広まり、朝鮮半島を経て日本に伝来しました。特に5世紀頃には、高句麗の影響が百済や伽耶を経由して日本に伝播したと考えられています。

日本列島では4世紀後半、北部九州で横穴式石室の造営が始まり、徐々に九州全域へと広がっていきました。5世紀には、より洗練された割石積みの石室が造られるようになり、6世紀には全国各地へと普及しました。この広がりには、約1世紀近くの時間が必要でした。646年の薄葬令によって、横穴式石室の造営は減少していったと考えられます。

日本における横穴式石室

日本の横穴式石室は、地域によって様々な特徴が見られます。例えば、奈良県の石舞台古墳のように巨大な石材を用いたものや、中国の塼槨墓を思わせる切石や平石を互目積み（ごのめづみ）にしたものなどがあります。九州地方では、石棺式石室や地下式横穴墓なども見られます。

畿内地方では、6世紀以降に横穴式石室が盛行しました。その構造は時代とともに変化し、より精巧なものへと進化していきました。一方、地方では、畿内地方とは異なる独自の様式が発展しました。

朝鮮半島との関連性

朝鮮半島でも、横穴式石室は漢王朝の支配地域である楽浪郡（現在の平壌付近）を中心に多数発見されています。しかし、その起源や高句麗との関係については、現在も議論が続いています。楽浪郡の横穴式石室は、在地の墓制ではなく、外来の墓制である可能性が高く、公孫氏や魏、西晋による支配の影響を受けたものと考えられています。また、高句麗初期の墓制との関連性も指摘されていますが、楽浪郡の横穴式石室が5世紀以降の平壌地域の横穴式石室に直接継承されていない点などから、関連性は希薄であるとする見解もあります。

代表的な横穴式石室

石舞台古墳（奈良県）: 巨大な花崗岩を用いた両袖式石室が特徴です。
見瀬丸山古墳（奈良県）: 全長28.4メートルという日本最大級の規模を誇ります。
花山塚古墳（奈良県）: 朝鮮半島の磚槨墳に似た磚積みの石室です。
文殊院西古墳（奈良県）: 切石積みの精巧な石室で、横穴式石室の最終形とされています。
奈良古墳群10号墳（群馬県）: 珍しいトの字型の石室を持つ古墳です。
権現山2号墳（群馬県）: 羨道に対して玄室が90度折れ曲がった特異な構造です。
* 段の塚穴（徳島県）: 天井が弓状に盛り上がり、平面形が胴張りの形状を持つ石室です。

まとめ

横穴式石室は、中国を起源とし、朝鮮半島を経て日本に伝来した墓制です。日本列島では、地域や時代によって様々な様式が見られ、古代日本の葬制の多様性を示しています。その起源や朝鮮半島との関連性については、未だに研究が続けられています。今後の研究によって、横穴式石室に関する理解がさらに深まることが期待されます。

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