楽浪郡

楽浪郡の概要

楽浪郡（らくろうぐん）は、前漢時代の紀元前108年から西暦313年まで存在した朝鮮半島の郡である。漢朝によって設立された楽浪郡は、真番郡、臨屯郡、玄菟郡と共に「漢四郡」と称され、東方における中華文明の重要な拠点となった。この地域は、朝鮮や日本における中華文明の血脈を受け継ぐ重要な役割を果たした。特に王氏が多く居住し、次に韓氏が続く人口構成が特徴であった。

歴史的背景

楽浪郡は、前108年に前漢の武帝によって衛氏朝鮮を征服した後に設置された。この征服を受けて、楽浪郡は朝鮮半島西部の統治を担うこととなった。しかし、漢の支配体制は点と線に基づくものであり、領域全体を均質に統治することは困難であった。特に遠隔地に位置する真番郡と臨屯郡は支配が難しく、前82年には廃止され、残りの県は玄菟郡に編入された。次いで、前75年には玄菟郡からの県が楽浪郡に移され、楽浪郡は急速にその領域を拡大した。

楽浪郡が拡張された結果、「大楽浪郡」とも呼ばれるようになり、戸数は62,812戸、人口は406,748人に達した。平壌郊外で発見された戸口簿によると、25県の人口は280,361人に上った。王莽が新朝を建国した際、楽浪郡は楽鮮郡と改称され、楽浪郡の歴史は混乱に舞い込んだ。

後の展開

後漢末期には、楽浪郡が公孫氏の支配下に置かれ、その後268年には帯方郡が設置される。このとき、楽浪郡は実質的には副次的な地位に甘んじていた。238年、魏が楽浪郡を接収し、次の年には倭女王卑弥呼が帯方郡を通じて魏と通交したことが記録されている。楽浪郡は265年に晋によっても支配され続けたが、時代が変わるにつれて衰退し、313年には高句麗に滅ぼされた。

社会と文化

楽浪郡には、郡の統治に対抗する豪族の台頭も見られた。王調は太守を殺害し、大将軍楽浪太守を自称したが、その後彼も王閎に殺害される。楽浪郡と帯方郡の地域には、5世紀まで土着の漢人や新たに移住した漢人が住み続けた。

考古学的には、楽浪郡の郡治は衛氏朝鮮国の都「朝鮮県」であり、現在の平壌市付近に位置していた。この地域から出土した楽浪漢墓は2,000以上存在し、多くの木製品や漆器が発見されており、これらは当時の繁栄を物語っている。特に南井里第116号古墳から出土した「漆絵人物画像文筺」は有名である。

楽浪郡の異説と現代の議論

楽浪郡の存在については異論もあり、特に北朝鮮の学者は、楽浪が中国の遼東半島になかったとする独自の歴史観を持っている。このような視点では、楽浪は独立した国家である「楽浪国」であったと主張され、課題として残る。

現在の楽浪郡

現在、平壌市には「楽浪区域」という行政区や「楽浪線」という鉄道の路線が設けられており、古代の名残を色濃く残している。楽浪郡の歴史は、朝鮮半島の文化と歴史に大きな影響を与え続けている重要なテーマである。

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