機能性野菜

機能性野菜（きのうせいやすさい）

機能性野菜とは、特定の有用成分を通常より豊富に含むよう開発された野菜の総称です。これは、従来の野菜にはほとんど含まれていない、あるいはごく微量しか含まれていない成分を、最新の生産技術や品種改良などを通じて高濃度に含有させることで実現されます。消費者の健康増進に寄与することが期待される、付加価値の高い野菜と言えます。

機能性野菜を生み出す主な方法としては、以下のようなアプローチがあります。

生産工程で新たな成分を与える方法

この方法では、植物が本来合成しない、あるいはほとんど吸収しない成分を、栽培過程で意図的に与えることで野菜に含有させます。代表的な例として挙げられるのが「マルチビタミンB12かいわれ」です。これは、広島大学とスプラウトメーカーである村上農園の共同研究によって開発された製品で、2004年に商品化されました。通常、野菜にはほとんど含まれないビタミンB12を、独自の技術でかいわれ大根に高濃度に含有させることに成功しています。

生産方法の工夫で既存の有用成分を増やす方法

このアプローチは、野菜がもともと持っている有用成分を、特定の栽培条件や環境制御によって効率的に増やし、濃度を高めるものです。ブロッコリースプラウトは、この手法の好例です。成熟したブロッコリーにも微量に含まれるフィトケミカル「スルフォラファン」は、抗酸化作用やがん予防効果などが期待される成分です。ブロッコリースプラウトは、その栽培方法を最適化することで、成熟したブロッコリーと比較して7倍から20倍ものスルフォラファンを高濃度に含有しています。この機能性野菜は、米国ジョンズ・ホプキンス大学の医療機関に所属していたポール・タラレー博士によって開発されました。

品種改良による方法

遺伝子レベルでの選抜や交配といった品種改良によって、特定の有用成分を自然に多く蓄積する能力を持つ品種を開発する手法です。この方法により、様々な種類の機能性野菜が誕生しています。

トマト: リコペンは抗酸化作用で知られるカロテノイドですが、品種改良によりその含有量を高めたトマトが開発されています。例えば、カゴメの「高リコペントマト こくみ」や、タキイ種苗のミニトマト「高リコペンミニトマト アイコ」があります。また、黄色いトマトである「高シス・リコピントマト 桃太郎ゴールド」は、吸収されやすい形のシス型リコペンを高含有する品種です。
ニンジン: ベータカロテンは体内でビタミンAに変換される重要な栄養素です。サカタのタネが開発した「高β-カロテンニンジン ベータリッチ」は、このベータカロテンを豊富に含む品種として知られています。
タマネギ: ケルセチンはフラボノイドの一種で、強い抗酸化作用を持つとされます。タキイ種苗の「高ケルセチンタマネギ Dr.ケルシー」は、ケルセチン含有量を高めた品種です。
ピーマン: ビタミンCやベータカロテン、ポリフェノール（アントシアニン）といった栄養素を特に豊富に含むよう改良されたピーマンも存在します。日本ベジフルーツの「アナスタシア」シリーズには、それぞれ特定の栄養素（ビタミンC、β-カロテン、アントシアニン）を高含有するよう特化された品種がラインナップされています。

これらの技術によって生まれた機能性野菜は、日々の食生活を通じて特定の栄養素や機能性成分を効率的に摂取することを可能にし、人々の健康維持や増進に貢献することが期待されています。

もう一度検索